中国軍は西太平洋を目指している
前提として、中国にとって東シナ海は天然ガスや漁業資源を有する海域であると同時に、中国沿岸部と西太平洋を結ぶ海上交通路だ。中国海軍や中国空軍が西太平洋へ展開する際の出入口に位置づけられる。
中国は日本列島から南西諸島、台湾、フィリピンへ連なる島嶼線を「第一列島線」と定め、これを越えた西太平洋でも安定して行動できる能力の獲得を目指してきた。そのために大型補給艦を配備して洋上補給能力を向上させ、空中給油機を増勢して戦闘機や爆撃機の行動半径も拡大した。海軍と空軍による統合訓練も増え、遠方の海空域で運用を続ける態勢を整えている。
結果として近年、中国海軍艦艇が宮古海峡や対馬海峡を通過して西太平洋へ進出する機会が増加。中国軍機も沖縄本島と宮古島の間を繰り返し飛行し、爆撃機、戦闘機、情報収集機などが長距離飛行を実施するようになった。
国家目標としての「海洋強国建設」
背景にあるのは、中国共産党が掲げる「海洋強国建設」という国家目標だ。習近平政権も海洋権益の拡大を重点政策として進めてきた。
海上を舞台に強化してきた能力は、軍事力だけに留まらない。中国海警局(日本の海上保安庁に相当する)では1万トン級巡視船の配備が進み、尖閣諸島周辺でも長時間の巡視が可能となった。海洋調査船や測量船による海底地形・海底資源の調査も進んでいる。
これらの動きは一見、バラバラのように見える。主体を担うのも中国海軍、海警局、海洋調査機関、国有企業など、別々の組織だ。だがいずれも独立した政策ではなく、それぞれが役割を分担しながら相互に補完しあい、中国の海洋利用能力全体を高めている。
南シナ海を例に取るとわかりやすい。中国は南シナ海で、漁業活動、海洋調査、行政管理、人工島の造成、港湾や飛行場の整備を段階的に進めながら、海域で利用できる拠点を増やしてきた。それぞれの施策は異なる主体が担うが、長期間にわたって複合的に継続された結果、海域での影響力拡大につながっている。
今回の掘削船の新たな追加も、こうした一連の政策の中に位置づけられる。

