わずか4メートル先に興奮したクマが
窓からそっと顔を出してみた。やはり暗闇でよく見えない。意を決して怒鳴ってみる。
「コラ!」
ガタガタは鳴り止まない。
「オイ!」
まだ止まない。
「オイコラ!」
……止まった。
「フーッ、フーッ」
鼻息とともに、そいつは姿を現した。
真っ黒い巨体。体長は1.5メートルはありそうだ。
顔はひと抱えもある。興奮して毛が逆立っている。
距離は4メートルほどしかない。
前を横切っていたのが、急に方向を変えて、こっちに向かってきた。
うわわわわ……。
慌てて窓を施錠して、カーテンを閉じる。
やばい。窓ぶち破って入ってきたらどうしよう。
バットを握りしめて息を殺す。
しばらく待って、恐る恐るカーテンを開けてみる。
クマの姿は見えなかった。
なんとかしてスマホを取りに行きたいので、意を決して外に出てみた。この時が一番緊張した。
電灯をつけると、ウッドデッキは散々だった。テーブルがぶっ倒され、モノが散乱してメチャクチャである。
そこで理解した。
この半年ほど、テーブルが囓られたり倒れたりしていることが何度もあった。
ベランダのサッシに体をこすりつけたような泥の跡があったりもした。
あれはすべて、コイツのせいだったのだと。
その後、駐在さん3人がやって来て、翌日以降、猟友会さんが駆除に来てくれることになった。
数日後に隣の集落で1頭捕獲されたと聞いたが、その後、拙宅には出なくなったので、コイツだったのかもしれない。

