いよいよ中学受験シーズンがやってきた。関西や埼玉・千葉地域では本番まで残り1カ月前後。2月1日からの東京・神奈川地域でも残り約40日。わずかな日数だが、この年末年始の母親の対処次第で「子供の偏差値が急上昇するミラクルも起きれば、その逆もある」と語るのは、進学塾「VAMOS(バモス)」代表・富永雄輔さんだ。
わが子を合格させたいのはどの母親も同じ。「受かるママ」と「落ちるママ」の差は一体どこで生まれるのだろうか。富永さんと、1万回を超える受験の相談にのってきた受験ブロガーの鳥居りんこさんに話を伺った。
毎年、年末の受験直前のタイミングで、子供を通常の塾のほかに個別指導塾へも強制的に通わせたり、家庭教師をつけたりする母親は少なくありません。しかし土壇場でジタバタするケースほど、『結果』はほとんどよくない傾向です」というのは鳥居さんだ。
富永さんも、親が本番直前になって子供の成績がふるわないのを見かね、「ビジョン&戦略なき塾選び」をするのは避けるべきだと語る。例えば、志望校の偏差値まであと5ポイント足りない。そんなとき月10万円を追加の受験対策特別予算で出せば、なんとかなるのではないか。そんな発想なのだろうが、うまくいくとは限らないのだ。
「僕らはそうした場当たり的な即効性を求めた対処を“受験ドーピング”と呼んでいます。親が追いつめられて、ついやってしまうんですね。でも、アスリートの場合、ドーピングをしても効果は必ずしも出ませんが、確実に体はボロボロになる。それと同様に、子供の偏差値アップの特効薬とならないばかりか、負担が増えたり混乱したりして、入試で実力を出せなくなってしまうこともあります」
現行の塾のほか、焦って個別指導や家庭教師に手を出すタイプを仮に「多神教ママ」とすると、「受かるママ」は敬虔(けいけん)な「一神教ママ」だと、鳥居さんと富永さんは口をそろえる。
「一神教ママとは、入塾時にしっかり家庭の教育方針にあった塾を吟味したうえで、塾長や塾講師の指導に従うお母さんのことです」(鳥居さん)
受験直前も塾の指導に従い、ジタバタしないで、体調管理など家庭でできることを万全サポートするタイプだ。
「私はお母さんから相談を受けるとき、申し上げるのは『“塾の色”に染まりなさい』ということ。それは塾の先生をリスペクトするということだけでなく、コミュニケーションをしようということです」(鳥居さん)