食事療法はQOLの低下をもたらす

「抗がん剤や放射線には副作用があるが、食事療法には副作用がないから、効かないかもしれなくてもやってみてもいいのでは」と考える人もいます。しかし、食事療法も副作用が生じるリスクがあります。まず、真っ先に思い浮かぶ副作用は、生活の質(QOL)の低下です。

好物を食べられない、旅先で食を楽しめない、毎日ニンジンジュースを大量に飲んで飽き飽き――そんなことになれば患者さんに大きな負担がかかります。糖尿病や腎臓病における食事療法も生活の質を下げるという副作用はありますが、一方で効果という利益があります。しかし、「がんを治す」と称する食事療法の利益は不明確です。

想像してみてください。がんと闘っている女性とその夫が「少しでも治る可能性を高めたい」という一心で情報を探します。その中に「砂糖はがんのエサになるから避けるべき」といった主張を見つけて、実行することに決めたとしましょう。医学的には誤りです。砂糖を完全に避けても、ご飯やパンなど他の炭水化物が消化によって糖に変わり、体内でも肝臓などで糖が作られますし、そもそも「がん細胞だけを飢えさせる」ことはできません。