迷いをなくすルーチンを持つ
忙しくても元気な人たちの3つめの習慣は、迷いをなくすルーチンです。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は生涯、黒のタートルネックとジーンズを着続けました。メタ社のマーク・ザッカーバーグ氏もグレーのTシャツとジーンズが定番です。これは「決断疲れ(Decision Fatigue)」という概念に基づいています。心理学者Roy Baumeisterらの研究では、人間の意志力や自制心は有限のリソースであり、小さな決断を繰り返すことで枯渇していくことが示されています。
朝起きてから「今日の服、何にしよう」「朝ごはん何にしよう」と次々に小さな決断を繰り返していると、本当に大切な仕事に使うべき脳のリソースがすでに消耗してしまいます。忙しくても元気な人は、「どうせ毎日やることは決まっている」と気づき、ルーチン化によって「決断しなくていい領域」を最大化しているのです。前述の「一食」を持つ人たちも、選択肢を絞ることで、上手に忙しい状況に適応できているのだと思います。
アマゾンのジェフ・ベゾス氏は衣類こそ固定していませんが、時間管理の厳格化と意思決定数の限定によって決断疲れを徹底的に回避しています。「1日に下す質の高い決断を3つに限定する」こと、「午前10時から正午の間に最も重要な決定を集中させる」ことが彼の戦略だそうです。午後5時以降は決断疲れを自覚し、「これについては明日午前10時に再度考えよう」と意思決定プロセスを完全にシャットダウンしているようです。
※参考:ジェフ・ベゾス・ウォルター・アイザックソン著、関美和訳『Invent & Wander ジェフ・ベゾス Collected Writings』(ダイヤモンド社)
※参考:YouTube CNBC「ジェフ・ベゾス氏、ワシントン経済クラブにて講演」
ルーチンがある人は変化に強い
会社員がベゾス氏ほど徹底するのは難しいと思いますが、面談では、服装のパターン化(曜日で決める、上下の組み合わせだけずらして変化をつける)をしている人、朝起きてから家を出るまでのルーチンを無意識にこなしている人がいました。無意識でできているということは、思考ゼロで、決断疲れを生じない習慣になっているということです。同じように就寝前のルーチンを持つ人もいます。
一方、メンタル不調者の多くは就寝前のルーチンを持っておらず、私は復職準備の時期に、眠前ルーチンの確立を勧めることがしばしばあります。
もちろん臨機応変な対応も大切です。しかし、のべ1万人以上の働く人たちを見てきて言えるのは、臨機応変に対応できる人は、まず自分のルーチンを持っているからこそ安定しているということです。土台が安定しているからこそ例外に対応できる。土台がグラグラした状態でさらに外部の変化に対応しようとするから消耗するのです。ルーチンとは縛りではなく、自由な意思決定のための安定した土台なのです。

