保守ではなく、単なる復古
「これだけ重大な問題なのに、ロクに審議もしないとは野党も情けない。選挙に勝ったことで高市首相は何でも数で押し通せると思っているようだが、こんなやり方はいずれつまずくだろう。マスコミも批判的な論調一色だ。自民党の議員はなぜ黙っているのか。これだけ世論とかけ離れると、この先恐ろしいことが起きるような気がする」
閣僚経験もある自民党OBは、そう不安を口にした。
「だいたい、自民党も日本維新の会も勉強不足の議員ばかりだ。何かというと『2600年の皇室の歴史』だの『神武天皇以来万世一系の皇統』だのという。2600年前、日本列島はまだ弥生時代初期で文字もない時代だ。それは保守主義などではなく、単なる復古主義にすぎない」
『ミカドの肖像』『天皇の影法師』など天皇制に関わる著作を数多く書いている参院議員の猪瀬直樹氏は、男系男子による皇位継承を主張する維新の所属でありながら、その男系男子論には冷ややかだ。改正案が衆院を通過した10日、自らのX(旧ツイッター)に「皇室典範改正では何も解決できない」と投稿した。
猪瀬氏は「『2600年』は歴史的事実としては誤りだ。せいぜい1500年余が常識で、昭和15年に「皇紀2600年式典」をやったあの神がかった感覚ではないか」としたうえで、「明治時代以降の近代皇室の歴史を全く知らずに、
世論の行方
衆院通過の翌日、新聞各紙は、そろって典範改正問題を大きく取り上げ、全国紙5紙は社説でも取り上げた。
各紙の社説の見出しは、朝日新聞「皇室典範改正 無体な可決 中道の不実」。毎日新聞「典範改正案が衆院通過 男系養子は撤回すべきだ」。読売新聞「皇室典範改正案 根幹変える質疑が3時間とは」。日経新聞「結論ありきの皇室典範改正は理解得られぬ」。そして産経新聞が社説にあたる「主張」で「衆院で可決 改正典範成立へ前進した」である。
産経を除く4紙が、力点の違いはあるが、改正案の内容と、わずか3時間の審議でそれを通過させた与野党の姿勢を批判している。
朝日新聞は「強引な国会運営の責任が政権にあるのは言うまでもない」としながら、中途半端な態度で法案に賛成したと中道改革連合を厳しく批判した。また読売新聞は、「立法府の総意」に含まれない養子の子が皇位継承を持つと言う点が盛り込まれていることについて「あまりに拙速で政府与党と賛成した野党の見識を疑う」「象徴天皇制の根幹を変える改正なのにその子にだけは現行法規定を適用する、との理屈は詭弁に過ぎない」となかなかに手厳しい。
毎日新聞は「男系に固執する養子案は時代錯誤だ。参院での修正を求める」と主張。日経新聞は「皇室をめぐる問題は、できる限り幅広い合意形成と国民の理解が欠かせない。『数の力』をたのんで改正案を押し通すべきではない」と、こちらは抑制した言い回しながら、高市首相の強引なやり方を批判している。

