業者が「変動100%」をすすめる理由

ローン金利がじわじわ上昇し始めています。今年6月は、借入期間10年の場合、固定金利の相場が1.5%前後、変動金利(優遇措置)が0.875%前後。08年5月、リーマン・ショック前の時点で各2.5%前後、1.5%前後だったことを考えると、歴史的にはまだまだ低い水準です。

そこでマンション業者は客に対して、ローン返済のシミュレーションをするときに変動金利100%で試算することが多いようです。なぜなら、固定100%で返済計画を組むよりも、客により高い物件を入手可能と思わせることができるから。その際の殺し文句は「金利が高くなったら、固定に切り替えればいいんです」。

こうした話に乗るのはいささか危険です。固定は変動よりも利率が高く、目先の支払いが増えてしまうため、切り替えに踏み切るには相当の覚悟が必要です。

変動金利を選択した場合、金利が上がっても、毎月の返済額は5年間、変わりません。しかし、返済額に占める利息の割合が増えます。つまり、元金の減りが遅くなってしまうのです。返済の明細表は半年ごとに銀行などから届きますが、その数値の羅列を見て、「金利上昇で元金の減り方が遅れた」と気づく人は少ないでしょう。

さて、変動か固定か。それは各家庭の懐事情と、金利の動向をいかに読むか、によるでしょう。

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3000万円を35年間借りた場合、どっちが得か?

表の通り、3000万円を35年ローンで返済した場合、今後の変動金利の上昇幅が2%にとどまれば、返済計画を固定金利で組むよりも総返済額が低くなり、金利上昇幅が3%になると高くなってしまいます。100%変動金利で組んでもいいのは、金利が想定より上昇しても家計が耐えられると判断できるケースでしょう。

ならば100%固定が安全か。固定金利のメリットは何より返済額が一定(元利均等の場合)で、家計運営が立てやすいこと。低金利時代のローン返済は本来、固定にするのがセオリーです。