民主党にも裏切られたという失望

ハサン・パイカーは1991年生まれの34歳。マムダニ市長と同い年のミレニアル世代だ。

この世代の人はしばしば、「政治に裏切られた」いう共通の感覚を持っている。

彼らは、9.11とイラク戦争を通じて、アメリカ政府を信用しなくなった。さらにリーマンショックでは、行き過ぎた資本主義が普通の家庭を破壊する現実を目の当たりにした。

その不信を政治の言葉にしたのが、2011年9月にウォール街で発生したアメリカ経済界、政界に対する抗議活動の「オキュパイ運動」だった。彼らが掲げた「99%対1%」(上位1%の富裕層が所有する資産が増加し続けている)というスローガンは、富裕層と普通の人々の分断を可視化した。

2016年の大統領選では、この怒りをバーニー・サンダースが受け止めた。「すべての人に医療を」というスローガンで大統領選に出馬し、若者の強い支持を得た。

しかし結局民主党はヒラリー・クリントンを候補に立て、トランプに敗北する。

サンダースを支持していたリベラルの若者には、「民主党にも裏切られた」という深い失望が残った。

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写真=iStock.com/adamkaz
民主党にも裏切られたという失望(※写真はイメージです)

マムダニNY市長が支持される理由

あれから9年、パンデミックを経て、ミレニアル世代の次のZ世代が成人に達している。一方、家賃、医療費、学生ローン、AI競争による雇用不安。未来への懸念は、さらに具体的な生活苦としてあらわれている。

それを、「当たり前に暮らせる街を取り戻す」というスローガンに言い換えたのが、マムダニ・ニューヨーク市長だ。

民主社会主義的な主張を、市政という生活に密着した舞台で、イデオロギーではなく「経済」に言い換えた彼の功績は大きい。

就任から半年、彼の公約である乳幼児保育の全面無償化、家賃の一部凍結、市が経営するスーパーマーケットなどは着々と実現に向かっている。

そしてついにそのパワーが、国政へ波及し始めた時、パニックに陥ったのは、「身内」であるはずの民主党主流派だった。その矛先は人気者マムダニではなく、その背後にいるインフルエンサーに向かっていった。