トランプ→左派の政治系インフルエンサー
しかし、第二次トランプ政権下でも、若者の生活不安は解消されていない。かつてトランプに賭けた若者の一部には、失望が広がり始めている。
その怒りの受け皿になろうとしているのが、パイカーなど左派の政治系インフルエンサーというわけだ。
パイカーのアプローチはトランプとは対照的だ。怒りの矛先を女性や移民ではなく、現代政治と社会構造へ向け直そうとしているからだ。
パイカー自身は明確な左派であり、民主社会主義に近いプログレッシブの立場を隠していない。
だが彼は若者に「左か右か」という踏み絵を突き付けはしない。
彼が発信するのはイデオロギーを問わず万人が共感できる言葉だ。そこには「なぜ家賃が払えないのか」「なぜ医療費で破産するのか」「なぜ働いても生活が楽にならないのか」という生活の実感が並ぶ。
だから彼のメッセージは、イデオロギーの壁を越え、経済的な不平等への怒りとして誰にでも届くのである。
「自分は未来の億万長者」という幻想
同時に、彼は若い男性の喪失感を弱者のせいにしない。家賃を上げているのは移民ではなく大家であり、食料品価格を押し上げているのはトランスジェンダーや不法移民ではなく、企業への権力集中と強欲なインフレだ、と語る。
さらに彼は、「ほとんどのアメリカ人は、自分たちが労働者階級だと理解していない」と問題提起する。99%の人々は資本蓄積で富を得ているのではなく、賃金を得て暮らしている。にもかかわらず、不思議なことに彼らには労働者の自覚がないのだ。
アメリカ人の多くには、「自分はまだ成功していないだけの未来の金持ち」という感覚がある。これはいわばアメリカンドリームを支えてきた「幻想」である。実際に金持ちになれるのはごくわずかだからだ。
だから富裕層課税や企業規制を、労働者を救うための政策とは考えず、「いつか自分に向けられる罰」のように感じてしまうのだ。
パイカーの言葉が刺すのは、まさにその幻想だ。
「あなたは資本家を守っているが、資本は持っていない」
そう言い切ることで、若者を「自分は未来の億万長者」という幻想から「自分はいま搾取されている労働者」という現実に引き戻している。
パイカーはこうした「現実的な経済ポピュリズム」の実践によって、社会に居場所がないと感じる若者たちが、イデオロギーを超えて共感する場を作っていると言えよう。

