「認知症」「要介護」のリスクが下がった実験結果
私はこれまで、数千人、1万人規模の入浴調査を何度も行ってきました。延べにすると、およそ7万人になります。
その中で、最近わかってきた長期的な効果の一つが、認知症の予防効果です。週0〜6回の入浴と比べて、週7回以上湯船につかっている方は、9年後に認知症になるリスクが大きく下がる、という私たちの研究グループからの研究結果が出ています。
(参考:J Balneol Climatol Phys Med 2025; 88(2):73‒82)
注目すべきは、これが夏の入浴でも当てはまるということ。冬は効果がやや薄まりますが、それでも十数パーセントリスクが下がり、夏の入浴ではさらに大きく下がります。
メカニズムとしては、やはり血流の改善が一番大きいと考えています。入浴すると頭の中の血流量も良くなります。認知症は、脳にアミロイドβのような不要なたんぱく質が溜まることが関係していますが、血流が良くなることで、こうしたものが除去されやすくなるのではないか。これはあくまで推測ですが、そう考えています。
要介護予防についても、同様の結果があります。元気な65歳以上の方を追跡したところ、毎日湯船に入っている方は、3年後の調査で要介護状態になるリスクが下がっていました。要介護や要支援の認定は市区町村が行うものですが、入浴頻度の低い方に比べて、毎日入る方は明らかにリスクが低かったのです。
(参考:J Epidemiol 2019;29(12):451-456)
夏でもお風呂に入る意味は、この2点からも言えるのです。いずれもシャワーだけの方は除いた、「湯船につかる」習慣についての結果です。
基本「40度に10分」、夏は「38度に20分」もOK
では、具体的にどう入ればいいのか。
基本となるのは、40度のお湯に10分、肩までの全身浴です。これまでの多くの研究や私が長年の研究から導き出した、もっとも効果的で無理のない入り方がこれです。半身浴ではなく全身浴を勧めます。肩までしっかり浸かったほうが、体全体がよく温まるからです(通院中の方は入浴法を主治医へご確認ください)。
入るタイミングは、就寝の90分ほど前。これが良い睡眠につながります、睡眠は、若さを保つうえでとても大事です。40度で10分入ると、深部体温が0.5〜1度ほど上がります。そして、お風呂から上がって90分ほどかけて、その体温が下がっていく。この体温が下がるタイミングで布団に入ると、深く質の良い睡眠が取れることが、研究でわかっています。皮膚の表面ではなく、体の中心の温度を一度しっかり上げて、それから下げる。これが「90分前」の理由です。
(参考:Sleep Med Rev 2019; 46:124-135)
ただ、夏に40度のお湯はとても入っていられない、という方も多いでしょう。そんなときは、無理せず温度を下げてかまいません。おすすめは、38度で20分。チャプチャプと遊べるくらいのぬるめのお湯に、その分ゆっくり浸かるのです。これくらいの温度なら、夏でも無理なく続けられます。40度でも38度でも、これくらいの温度のお湯は副交感神経を優位にしてくれるので、しっかりリラックスできます。
ただし、温度を下げると、その分だけ血流を良くする効果は弱くなります。そこで活躍するのが炭酸系の入浴剤です。ぬるめのお湯でも、炭酸系入浴剤を入れることで血流をしっかり補える。夏こそ、この組み合わせが力を発揮します。

