どうすれば“聞き手がハッピー”になるか

では、どのようなものがビジョンであり、北極星たり得るのでしょうか? 僕はこのように考えれば、ビジョンを設定しやすくなると考えています。

「聞き手はどうすればハッピーになるのだろう?」

プレゼンの目的は「聞いた人が喜んで行動すること」とお伝えしました。つまり、人はハッピーになって初めて、喜んで動けるようになるというわけです。僕たちはそんな北極星をオーディエンスにわかりやすく掲げなければなりません。

うまく話すことやカッコ良く振る舞うことは、とても表面的なこと。これも陥りやすい罠の1つです。プレゼンの「スキル」は表面的なオプションに過ぎません。本来、そんなことで深く悩む必要はないのです。

一番大切なものは、聞き手の遥か頭上で輝きます。聞き手がどのようにしてその光を見つめながら、自分のハッピーのために行動できるのか。そんなビジョンを描けているかどうか。あなたが掲げた北極星がみんなをしっかり照らしているかどうか。それこそが、最も大切なことなのです。

「米国本社のスライドを訳しただけ」の酷い過去

今でこそ僕はプレゼンを評価されるようになりましたが、初心者のころは酷いものでした。まず、そもそもプログラマーだったため、外部向けに話す機会などはほとんどなかったという現実があります。

そんな僕がプレゼンの機会に直面したのは、マイクロソフト社にITコンサルタントとして入社してからのこと。でも、当時は経験が浅く、プレゼンの内容は米国本社のスライドをそのまま日本語訳したような代物しろものでした。

スライドは文字ばかりで、イメージの使い方もわかっていなくて、とにかく話すことに精いっぱい。オーディエンスが「何を求めているのか」を考えずにコンテンツをつくり、それを時間内に読み上げるようなプレゼンを繰り返していたのです。それでも時間が不足したり、余ったりして、何度もアンケートで酷評されました。

オーディエンスが求めることにしっかり向き合えていなかったのです。

でも、経験を重ねていくうちに、やがてあることに気がつきました。「今日はうまくいったかな?」「お客さん、ちょっと喜んでくれたな」と感じられたときには、いずれも自分が話したいことではなく「相手が求めていること」や「気づいていない情報」を話せていたのです。

ミーティングをするビジネスパーソンのグループ
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです