住宅強盗の実行犯は闇バイト5人
稲城事件の実行役は5人。そこに運転手役が1人に、盗品の売却役2人をくわえた計8人でチームを組んでいる。
用意した道具は以下のようなものだ。突撃用の「ハイエース」が1台に、盗品を移し替える逃走車の「ヴィッツ」が1台。いずれもレンタカーで用意した。大手作業服店で購入した宅配業者を装うユニフォームや段ボールに、脅し用の凶器となるハサミを2本。それに、拘束用の粘着テープやガムテープ、結束バンドなどである。
事件前、指示役と実行役との間ではこんなメッセージが交わされていた。
「住宅街だから正面からGO! イージーですね」
犯行の前日にあたる10月19日、実行役たちは「ルフィ」こと今村の指示で現場の下見に訪れた。だが、事前情報とは異なる点がいくつもあり、彼らは困惑した。自宅に車が3台停まっており、防犯カメラが2台設置されている。近くに交番まであった。
渡邉グループが用意した実行役の1人である石栗一樹は、異変を察知して「キム」(藤田)に連絡した。とても「イージー」なものとは思えなかったからだ。
「話が違う」
そう石栗が連絡すると、「キム」からこんな回答があった。
「情報提供者に確認しますね」
防犯カメラがあり、翌日に延期
しばらくすると、「キム」から「インターホンを押し、『粗大ごみが邪魔だ』とクレームをつけて突入するように」と指示を受けた。しかし、事前情報との違いから、現場の実行役5人は完全にやる気を失っていた。実行役で口裏を合わせ、「やったけど上手くいかなかった」と嘘の報告を入れる。「ルフィ」の指示を受けていた実行役の葛岡隆憲も、同じように対応した。
住民に不審がられるリスクが高いことなどを説明し、この日の犯行は断念することになる。実行役たちは一度東京近郊に散り、翌日に臨む運びとなった。後に藤田の裁判で証人出廷した石栗は、当日の様子をこう話している。
「どちらかといえば、『ルフィ』は現場の声を聞いて、実行を諦めるような感じでした。『キム』はどうしてもこの日にやれ、といって諦めてくれない。そんな雰囲気を感じました」
今村と藤田は再度計画を練り直した。宅配業者を装いインターホンを押し、出てきた家人を刃物で脅して金庫の場所を吐かせる。もし別の家人がいた場合は、他の実行役が制圧し、拘束するというものだ。実行役5人の役割は、金庫を探す者が1人、逃亡の動線を確保する者が1人、残りは制圧部隊と割り振られた。

