被害者に近しい人物がリーク?

・高級時計を揃えている時計店がある。金庫があり。現金3000万円は固い。自宅兼店舗。住宅街

・ボケ老人。ゴールド狙い。金庫あり。3000万円現金あり

詳細は省いたが、内容は概ねこのようなものだった。強盗先の情報をかなり細かく入手しているのがわかる。藤田や小島の裁判でも、「(被害者に)近しいところから情報を得ているため(今村の情報は)確証が強い」という趣旨の証言が残っている。

今村は実行役へ報酬を支払うことに抵抗があった。渡邉グループも、実行役はその場に捨て置いて報酬を支払わないという方針だった。しかし、強盗の総報酬の約4割を、今村は「ネタ元」に支払っている。その点にも引っかかりを覚えると言わざるを得ない。

ネタ元に支払って残った額を、渡邉と今村の両グループで折半し、実行役や業者への報酬に充てる。そのような座組で強盗計画は動き出している。補足となるが、実行役の中には報酬を支払われなかった者が大半だ。実行役として使い回すために報酬を支払われた者についても、1案件につき50万~250万円ほどと、指示役たちの懐に入る額と比べれば微々たるものだった。

ルフィグループの今村磨人容疑者、渡辺優樹容疑者、藤田聖也容疑者(いずれもフィリピン入国管理局提供)、2023年11月
写真=共同通信社
ルフィグループの今村磨人容疑者、渡辺優樹容疑者、藤田聖也容疑者(いずれもフィリピン入国管理局提供)、2023年11月

3500万円を奪った「稲城事件」

稲城事件の計画が本格的に稼働し始めたのは、発生のおよそ1週間前。2022年の10月12日からである。まずは指示役である今村と藤田、そこに渡邉を加えたメンバーで、被害者の資産状況と家族構成、実行日時、在宅の有無、狙う時間帯、道具の種類、実行役の人数などについて話し合われた。

このやり取りを経て、今村は自らが用意した実行役へ指示を出す。渡邉グループでは、小島がSNSで集めた実行役に、藤田が情報を降ろした。

ただし、実行役に奪うカネの額や住所など細かい情報を知らせるのは、いずれも犯行の直前だった。他の犯罪組織への情報の横流しや、捜査機関への密告を防ぐことが目的であり、強盗が行われた3カ月の間この点は徹底されていた。事案によっては、運転手役にしか詳細な情報が共有されないこともあった。