専門家の警鐘どおり進む「富裕層だけの街」

エルシェシュタウィ氏はムカーブ発表直後の2023年2月、アラブニュースの取材に対し、「この開発が、富裕層のためのエンクレーブ(特定の層だけが住む、周囲から隔絶された排他的地域)と受け取られてはならない」と警鐘を鳴らしていた。現実のリヤドでは、まさにその懸念どおりのことが起きている。

実際、サウジの国民生活への影響は大きい。

リヤドに住む若い事務管理職のシャハド・アル・ガムディ氏が、アラブニュースに苦境を打ち明けた。「家族でこのまま賃貸を続けるのはほぼ不可能です。こぢんまりしたアパートの家賃だけで月給の大部分が消え、ほかの出費に回す余裕がほとんどありません」。長い目で見れば、いっそローンを組んで家を買ったほうが安上がりではないかと、真剣に検討しているという。

イスラム教徒の女性がパソコンの前でクレジットカードを見て悩んでいる
写真=iStock.com/Natee Meepian
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リヤド中心部の家賃相場を見れば、その切実さがよくわかる。同紙が2024年7月に不動産大手CBREのレポートをもとに伝えたところでは、1ベッドルーム(日本の1LDKなどに相当)のマンションで平均月額5000サウジリヤル(約21万6000円)超。3ベッドルーム(3LDKなどに相当)ともなれば、月1万リヤル(約43万2000円)に達する。中間層や低所得層は、急騰する家賃に苦しむ。

サウジアラビアで深刻化する「家賃値上げ」

サウジで働く外国人駐在員のラモナ・ハーモン氏も、同紙に過酷な体験を語った。大家から一方的に、賃料を58%引き上げられたのだという。

現地では契約更新時の値上げ幅は5〜10%が上限の目安とされるが、その常識からかけ離れた水準である。政府運営の賃貸プラットフォーム「Ejar(イジャール)」に報告したが、返ってきたのは「新規リース契約での値上げを禁じる法律はない」という素っ気ない回答だった。借り手には、法の後ろ盾などどこにもなかったのだ。

こうした深刻な事態を受けて、ついにムハンマド皇太子も動いた。サウジ系ニュースサイトのアル・アラビーヤ英語版が昨年9月に報じたところによると、皇太子の指示のもと、サウジ政府はリヤドの住宅・商業賃料を5年間凍結する王令を発布。同月25日に発効し、既存・新規を問わずすべての賃貸契約で家主都合による値上げが禁じられた。