消費税3倍に戸惑う国民

家賃問題が一段落したとはいえ、サウジの国民生活は安泰には遠い。

サウジアラビアは1970年代の石油ブーム以降、「レンティア国家」であり続けてきた。石油など天然資源からの収入(レント)に依存し、国民には課税せず、富を分配する国家体制だ。潤沢な原油マネーで手厚い福祉と非課税の給与を提供し、王室は国民の支持を得てきた。

サウジアラビアのムハンマド皇太子
サウジアラビアのムハンマド皇太子(写真=Saudi Press Agency/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

絶対君主制の下、選挙はなく、国民には指導者を選ぶ権利がない。代わりに、王室が石油の富を分け与える。米シンクタンクのベーカー公共政策研究所はこの構図を、国庫から国民の財布への「一方通行のカネの流れ」と表現する。

しかしいまや、国民がカネを差し出す側に回った。

同研究所が2020年に伝えたところでは、サウジ政府は原油収入の急落を受け、270億ドル(約4兆3600億円)規模の緊縮策に踏み切った。石油依存からの脱却を掲げたはずの国家戦略「ビジョン2030」の予算さえ80億ドル(約1兆2900億円)削り、棚上げせざるを得なかった。ビジョン2030にはムカーブほか、前述の未来都市ネオム計画が含まれる。

政府は緊縮策の柱として、付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)の3倍増に踏み切った。2018年に5%で導入した時点ですでに物議を醸していた税率を、ガソリン、食料品、住宅売買、民間医療を含むほぼすべての品目で一気に15%へ引き上げたのだ。産油国でありながら、日本の消費税率を上回る。

食いつくされる政府予算

一連の負担増を、かつてのサウジ国民なら「まずもってあり得ない」と考えていただろう。

それだけでなく政府は、公務員向けの生活手当も廃止した。2018年にエネルギー補助金を縮小した際、その埋め合わせとして導入した月額270ドル(約4万3600円)の手当だ。

こうした施策をもってしてもなお、政府は財政赤字を止められずにいる。タイムズは昨年10月、政府が同年の財政赤字見通しを当初の2倍以上にあたる約650億ドル(約10兆円)へ引き上げたと報じた。

資金繰りに追われる閣僚らは、数百億ドル規模の融資交渉に奔走している。ハリド・アル・ファリハ投資相は、「ギガプロジェクトが、政府から多くのリソースを奪っている」と認めた。開発を推し進めてきた閣僚の口から出た言葉だけに、事態の重さを物語る。

この危機の根底にあるのが、原油価格をめぐる埋めがたい落差だ。エンジニアリング・ニュース・レコードによると、サウジが財政赤字を免れるには、原油が1バレル90〜110ドルで取引される必要があるところ、実際には60〜70ドル台にとどまっている。必要な水準のおよそ3分の2に過ぎない。

政府系ファンドのPIFも深手を負っている。タイムズによると、PIFのギガプロジェクト投資残高は前年比で12.4%減少した。エンジニアリング・ニュース・レコードによれば、ギガプロジェクトへの投資で3年間に計80億ドルの評価損を計上している。