国家プロジェクトが国民を苦しめている現実
「ムカーブの中に入れば、別世界へ運ばれる」と、デベロッパーのダイクCEOは豪語していた。
2024年の観光フォーラムでの発言を、アラビアン・ガルフ・ビジネス・インサイトが伝えている。ダイク氏は、直径も高さも340メートルに達するホログラフィック・ドームが生み出す没入空間は、「別世界への入口として有名になる」と胸を張った。
だが、ギガプロジェクトへの過剰投資でPIFは資産の大幅な毀損に見舞われ、政府は膨らむ財政赤字を増税と給付削減で埋め合わせるほかない。国民は自ら、家計の負担増でそのツケを払わされている。
こうした事実を踏まえれば、「世界最大」の看板を追い求めてきたムカーブなどサウジの開発モデルが根本から破綻していることは、もはや否定しようがない。石油依存からの脱却を図ったビジョン2030だが、歯止めをかけることなく構想を広げ続けた結果、図らずもかえって国家の財政を危機に晒すこととなった。
皮肉にも、ダイク氏の予言通りになったと言えるかもしれない。ムカーブはたしかに「もう一つの世界への入口」となった。ただし、国民が連れて行かれた先は、黄金建築のドーム内に映し出される幻想的な世界とはほど遠い。住宅高騰と増税、給付削減にあえぐ、もう一つの現実世界であった。

