話を掘り下げるために
田原さんの話がおもしろく感じるのは、この疑問の切り込みが的確であり、だれもがもやもやスッキリわからない疑問に切り込んでくれるからだ。これで話がよりクリアになって「なるほど」と合点がいき、ますます流れに引き込まれていくだろう。つまり、これを自分の話に対して自分で質問を潰すことで、話はよりクリアになっていくのである。
先ほどの話で、ほかの保険会社と較べ「時期はいつか=When」「どう違う=How」「メリットは何?=What」などで話が展開されている。記者が記事を書く際にこの「5W1H」はよく使う。ご存知の通り「いつ=When」「どこで=Why」「だれが=Who」「何を=What」「どうした=How」「なぜ=Why」と話を詰めていくものだ。これが必要な情報であり、それを骨格にして話の肉づけをしていく。だから、この骨格で不足部分を質問で潰せばよりわかりやすくなるわけだ。そして最後に「つまり=in short」こういうことだ、と誰でも理解できる表現に直していく。たとえば、田原さんがこんな風に、話を繰り返している。
岩:ただ、病気で手術が決まっていて、手術前に駆け込みで入って、告知がなかったらお支払できないこともあります。
田:なるほど、“すでに手術が決まっているのに言わずに入ったらダメ”なんだね。
岩:これは自動車保険で、すでに車に傷がついていて、保険を払ってくださいというのと同じことですから。
田原さんの言い換えで、聞き手の頭はスッキリと整理されて、次の流れを聞く準備が整う。そこに、さらに岩瀬さんがわかりやすいたとえ話を持ちだしたことで、この話はさらにおもしろくなった。5W1Hで話の骨格の不足を確認し、わかりにくい部分や疑問はつぶし、最後にわかりやすく言い換える。これを、聞き手の目線に立って考えることで、より話が伝わりやすくなるはずだ。
たとえば田原総一朗さんと自分が対話をしたとしたら、「ちょっと、そこ説明して」と、どこに切り込んでくるだろう……そんな風な想定問答をしてみると、自分では気づかなかった話の不足や、人が知りたい情報が自らの鉱脈から掘り起こせるかもしれない。これであなたの話はますますわかりやすく、おもしろくなっていくことだろう。