情動をかき立てる出来事が記憶を強める
営業でもプレゼンでも、あらゆる場面で視覚的な材料は重要であり、あるとないではその効果が大きく異なってくる。目で見せることで話はクリアになるし、自分の言わんとすることが目からも耳からも刺激となって、より記憶に焼きつくからだ。さらには実物を持ちこんで見せたり触ったりしてもらうことで聞き手の五感を刺激できるため、いっそう相手の注意を引きつけられるだろう。
先日、企業プロジェクトのプレゼンを拝見させていただいたとき、プログラミングの専門用語を並べ立てられて少々戸惑ってしまった。学校でC言語を少しだけ習い、仕事でコンピュータは使ってきたものの、技術に関しては「すごいんだろうなぁ」くらいで、デモを見せていただいて、やっと「ほう」とすごさを感じられた。
さて、私も体験させていただけるのかと思ったところ……そこから先は「パスワードをお渡しするので、自身でご覧ください」とのことだった。せっかくの製品に触れられず、なんとも残念だったものの、では後で見るかと言うと、わざわざ長いパスワードを入力してみたいと思うほどではなかった。つまり、それっきりになり、私の記憶力の悪さもあってか、見せていただいた内容も残念ながらさほど記憶には残っていない。
記憶については、『記憶と情動の脳科学』という本にこんな風に書かれていた。
「情動をかきたてることが、社会的な出来事であれ、実験室での単語の学習であれ、記憶を強める」(*1)
実際に触って体験することで、五感は刺激を受けて、思う以上に記憶を促してくれるものであり、どうやらそれは反復して記憶するよりも効率的なようである。今回も、その場で体験させていただければ違った感触を得られたかもしれないし、製品に精通した方がそのおもしろさやスゴさをとりあげてくれたら、いいとこ取りでより記憶は強くなったように思う。
目や耳で見聞きするだけよりも、実際に体験することではっきりと記憶に残ることは多くなる。それも、何かしら刺激になるような出来事であればなおさらだ。