「その時、選手たちは日本のファンのありがたみ、メディアへの感謝を知るわけです。また、勝負は下駄を履くまでわからない、ということは身に染みて知ったことでしょう」

話を今に戻せば、サッカー日本代表とメディアの関係性はすこぶるいい。森保監督は練習グラウンドにメディアが来たら、練習前に一人ひとりにあいさつをしていくそうだ。メディア対応、ファン対応を殊の外、大事にしている。誠実なのだ。選手にも、メディアには積極的に話をするように啓発してもいる。

そういえば、メンバー発表や試合後の記者会見で、森保監督は必ず、冒頭で、こうあいさつする。「ファン、サポーターのみなさん、メディアのみなさん、いつもお世話になっています。ありがとうございます」と。

藤江さんが笑いながら言う。

「記者会見って時間が限られているので、感謝のあいさつをまどろっこしいと思う人がいるかもしれませんが、必ずやりますね。本音なんでしょう。メディアへの丁寧な姿勢はほんと、いつも感じます。日本の“同志”として、一緒に戦いたいという思いが伝わってきます」

クロアチア戦後に叫んだ「最高の景色」

もうひとつのテレビの映像は、2022年12月5日、W杯カタール大会の決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)でクロアチアにPK戦で敗れた後のワンシーンである。

日本代表は初のベスト8進出の道を阻まれた。アルジャヌーブスタジアムのピッチの一角に日本代表の円陣がつくられた。落ち込んだ選手の顔を見渡しながら、当時54歳の森保監督は目に涙をためながら大声で言った。絶叫に近かった。

「みんなが新しい景色、最高の景色を、
目指していけば、必ず歴史が変わる。
みんなでやっていく、ね」

この試合も、藤江さんは現地で取材していた。「まだ、その時は、森保さんの続投は決まっていなかったですけど」と振り返り、こう続けた。

「もちろん、ピッチ上のそういうシーンは、僕らは共有できませんでしたけど、森保さんの試合後の熱は伝わってきました。何を持って最高の景色というのか。たぶん、俺たちはベスト8に行けたということを言いたかったのだと思うわけです」

後日、森保監督が2026年W杯北中米大会まで指揮を執ることが決まった。森保ジャパンの第二期がはじまる。吉田麻也からキャプテンを引き継いだ遠藤航が最初のチームミーティングで宣言した。「俺たちは(W杯で)優勝できる」と。

最高の景色とは、ベスト8ではなく、「優勝」との共通認識がチームに生まれたのだった。