「指揮する人」から「任せる人」に変わった
やはり経験は宝である。サッカーワールドカップ(W杯)で日本代表が躍動する。初めて2大会連続の指揮をとる57歳の森保一監督のマネジメント力の変貌がチームの成長を促している。
サッカー取材歴35年。サッカージャーナリストの藤江直人さんは「自分で率先して指揮をとる形からマネジメント型に変えたんです」と説明した。
「ワールドカップをまたいで監督をするにあって、一番怖いのはマンネリです。そうならないために、2期目、コーチ陣をがらりと変えたんです。まず名波さん(浩)と前田さん(遼一)の両コーチを呼んで、その後、長谷部さん(誠)もコーチに加え、最後、(中村)俊輔さんもですから。(練習の)現場はコーチたちに任せるようになりました。完全に分担制をしいて、森保監督は全体を見るような感じでマネジメントしているわけです」
スポーツマネジメント論でいえば、森保監督による指導体制は、従来の指揮・命令型リーダーシップから「ファシリテーション型リーダーシップ」へと重心を移したのだろう。監督中心の組織から、コーチ陣と選手が知識を共有する分散型組織へ転換したことになる。
森保監督とコーチ陣、選手間の信頼構築をベースとし、選手の主体性を引き出しながら目標達成へ導く手法である。新たなコーチ陣はみな、かつて日本代表で活躍した選手、多くは海外クラブでのプレー経験を持つ。
海外組23人が生んだ「ビビらない日本代表」
ちなみに今回のW杯登録枠の26人中23人が海外クラブ所属となっている。初戦(日本時間6月15日)のオランダ戦(△2-2)、2戦目(同6月21日)のチュニジア戦(○4-0)でプレーしたのは、全選手が海外組だった。藤江さんは「森保さんがよく言うのは、海外組は“普段から非日常でプレーしている”ということです。大舞台のピンチでも選手は動じない。まったく、ビビらないんです」
なるほど、だから、強豪相手のオランダ戦。先行されても追いつき、2点目を奪われても、最後にまた同点とできたのだろう。日本代表選手の精神力のタフさが垣間見えた。
ついでにいえば、2025年10月14日に東京スタジアムで開催された国際親善試合において、ブラジル代表に前半に2点を先行されても、3-2で歴史的な逆転勝利を収めたのだった。藤江さん曰く。「この試合は、堂安(律)たちが主体性を持って、後半、ブラジルと殴り合いにいって、3点とったわけです」と。

