クリーニング店の「意外な大敵」とは

意外に知られていないのが、ボールペンのシミ抜き難易度が「色」によって大きく異なるという事実だ。最も難しいのは「黒」で、黒インクは青・赤・黄など複数の色素を混ぜ合わせているため、薬剤に弱い青から先に抜け、最後に落ちにくい赤や黄色が残りやすい。さらに黒インクにはカーボン(炭素)などの微細な固形成分が含まれることが多く、これが繊維の奥に入り込むと物理的に除去することが極めて困難になる。次いで難しいのが「赤」や「黄色」で、比較的落としやすいのが「青」だ。

色以上に難易度を左右するのが「インクの種類」である。昔ながらの油性ボールペンはクリーニング店の溶剤と相性が良いが、最近主流のゲルインク(顔料インク)は耐水性・粘着性が高く、プロでも完全除去が極めて難しい。店に持ち込む際は「何色か」「油性か水性かゲルインクか」を伝えることで、対応の精度が変わる。

「たった一本」が工場の稼働を止めてしまう

よくあるのが、ワイシャツの胸ポケットにボールペンを入れていたことに気づかず、そのままクリーニングに出してしまうケースだ。工場で洗浄中にボールペンのインクが破裂してワイシャツがインクまみれになってしまう。それどころか周囲のワイシャツにも飛び散り、工場に甚大な被害を及ぼした事故もある。1回の洗浄でワイシャツを100枚洗った場合、そのうちおよそ50枚に被害が及び、そのシミ抜きをするだけで膨大な作業時間が必要となる。たった一本のボールペンが工場の稼働を止めてしまうこともあるのだ。

ワイシャツの胸ポケットに差したボールペン
写真=iStock.com/joshlaverty
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こうした「ポケットの入れっぱなし」トラブルは、ワイシャツに限った話ではない。リップクリームやチョコレートが紛れ込むのは、スーツやコートなどのドライクリーニング品で起こりやすい。ポケットに入れっぱなしにしていたものが洗浄中に溶け出し、裏地や周囲の衣類に広範囲のベタつき汚れを残してしまうケースも少なくない。こちらも除去には手間と時間がかかり、現場にとっては見えにくい大きな負担となっている。