とどめを刺したのは…
その先で待ち構えていたのは、まだ一度もヒグマを撃ったことのない黒渕澄夫と小濱由紀雄だった。2人は息を殺し、ササ藪の暗がりをにらみ据えていた。
そこへ、巨影――ヒグマが姿を現す。小濱がとっさにヒグマ目がけて338口径の弾を放った。銃身から飛び出した弾丸はヒグマに吸い込まれ、巨体はひれ伏すようにササ藪の中へ沈み込む。
「近づくなよ、まだ終わっていない!」「トメを撃て!」
矢継ぎ早に赤石の指示が飛ぶ。
小濱が慎重に距離を詰め、トメの一撃を叩き込んだ。
夜明けから続いた追跡劇は、日没を目前にした午後3時すぎ、ようやく幕を閉じた。
朝方にうっすら積もっていた雪はすでに消え、牧草地には再び緑が浮かび上がっていた。
一日中、人に追われ続けたヒグマは、極限の緊張に張り詰めていたのだろう。
銃弾が命を絶つ瞬間、体内を巡っていたアドレナリンが一気に放出され、全身の筋肉は岩のように硬直したまま斃れ伏していた。
後に測ったところ、その巨体は実に360キロだった。獲物を仕留めた後は、私の役目は運転手からカメラマンへ変わる。黙々と巨大なヒグマとの写真を撮り続けた。
自らの手で仕留めた獲物ではないにせよ、赤石の胸には確かな達成感が静かに積み重なっていた。この巨大な獣の弔いは、夜半までかかるだろう。酒を嗜む者にとって、今宵の酒は格別の味になるに違いない。
酒は一滴も飲まない赤石には、コーラが待っている。


