ビールと缶チューハイの酒税が異なる経緯
ビール類の3回に及ぶ増減税を含めた今回の酒税改正の詳細が決まったのは、2016年末の2017年度税制改正においてだった。
ただし、原型はさらにその11年前の2005年末の2006年度税制改正に遡る。
財務省がこのとき作成した改正案は、ビールや日本酒、焼酎など10種類以上あった酒類の分類を4分類に再編したのが特徴だった。
4つの分類内の税率格差を、財務省は将来的に是正させていく方針を示したのだ。
4分類とは、①ビール系の「発泡性酒類」、②日本酒とワインの「醸造酒類」、③焼酎とウイスキーの「蒸溜酒類」、④リキュール、みりん、合成酒類の「混成酒類」。
「発泡性酒類」には、ビール、発泡酒、第3のビールばかりではなく、この時点では発泡性果実酒や缶チューハイなどのRTDが含まれていた。
2006年度税制改正により、第3のビールの酒税は350ミリリットル当たり3.8円増税されて28円になるが、缶チューハイも0.2円増税されて28円で統一される。これは分類内の税率格差是正という方針に沿った形だった。
ところが、11年後の2017年度税制改正では、RTDは①「発泡性酒類」から②「醸造酒類」へと移行していたのである。
このため今年10月以降、RTDの税額はビール類よりも350ミリリットルで19.25円も安くなる。しかも、RTDの税額は06年6月以来、28円のまま20年以上も維持され続け、今年10月に7円増税される。税制優遇な扱いを受けてきたのだ。
財務省は「RTDには発泡性でないものもあり、2017年度税制改正にて、ビール類とRTDは同種同等ではないとした。業界と話し合いも持った」と説明する。
RTDが発泡酒超えになったワケ
ビール類市場が縮小している原因の一つは、RTDによる市場の浸食がある。旧第3のビールからRTDへの流出は大きい。
RTDが急拡大したきっかけは、2001年発売のキリン「氷結」のヒット。「氷結」は缶チューハイと唱いながらも、ベース酒に甲類焼酎ではなくウオッカを採用した。
キリンには焼酎の蒸溜設備がなかったためだったが、サントリーをはじめ各社は追随。ウオッカベースの缶チューハイは、べとつかず後味がすっきりしていて、20代を中心に受け入れられていく。
「ビール類の苦味を敬遠する若者は多い。苦い酒はたくさん飲めるが、甘い酒は多くは飲めない。RTDを少量飲むのが、若者のトレンドでしょう」(ビールメーカー幹部)。
「氷結」が発売された翌年(2002年)のRTD市場の販売数量は、35万キロリットルだった。同年のビール類市場は、5億4742万箱なので約693万キロリットル。RTD市場はビール類市場のほぼ20分の1の規模でしかなかった。
これが、2025年にはどうなったのか。サントリーの中野景介ビール・RTD部部長は「2025年のRTD市場の販売数量は2億500万箱(1箱は350ミリリットル缶が24本=8.4リットル)」という。これは172.2万キロリットルである。
同年のビール類市場は3億1186万箱だったので、394.8万キロリットル。発泡酒②を含む発泡酒の販売数量は169.8万キロリットルほどなので、RTDがすでに上回っている。
