農産物表示のグレーゾーン
しかも有機JAS法には、じつはグレーゾーンがあります。有機JASマークを取得していない農産物、畜産物および加工食品に対して「有機」「オーガニック」などの文言をつけるのが禁止されているのは前述の通り。しかし、厳密に言うと禁止されている範囲は「名称の表示」にとどまります。
つまり、有機JASマークを取得していないほうれん草を「有機ほうれん草」「オーガニックほうれん草」といった表記名にした場合には明らかに違法です。ところが、商品説明文などに「有機」「オーガニック」などと書かれている場合は、有機JAS法の運用上ではグレーゾーンだといえます。
とはいえ、消費者に誤解を与えかねない「優良誤認(景品表示法)」に該当する可能性が高いので、本来は消費者庁が不当表示として対応すべき案件です。しかし、対応が追いついておらず、特にオンラインショップを見ると、JASマークの表示なく「有機」「オーガニック」といった文言を使用する不適切な事例がたくさん確認できる状況です。
有機農産物は、いまだにスーパーや青果店などでの取り扱いがあまり多くありません。オンラインショップで購入することが多いでしょうから、注意が必要です。
見た目や味で見分けられるのか
さて、ときどき「有機栽培の野菜は、慣行栽培の野菜よりも見た目や食味に優れている」という話を耳にします。それは本当でしょうか。
まず、見た目ですが、基本的にオーガニックかどうかを判断することは不可能です。パッと見でわかれば、詐欺的な商品があふれることにもならなかったはず。農産物の外見は、農法だけで決まるものではなく、その年の天候や地質など、さまざまな影響を受けるものですから、生産者であっても判別は不可能でしょう。
そうして、食味(味・香り・食感)の違いもハッキリしません。味見をするときに目隠しをして公正に比べる「盲検試験」を行っても、有機野菜と慣行野菜のどちらがおいしいかについて、一貫した結果が出ていないのです。
例えば、2007年の研究によると、その野菜を食べて、全体としてどれくらい好きかという「官能評価」や「風味の強さ」や「苦味」などでほとんど差がありませんでした(※1)。トマトだけ慣行栽培のほうが「甘い」「味が強い」といわれたこともありますが、それは熟れ具合の違いが原因で、農業の方法そのものの差ではありません。2020年代の研究でも、同様に、味などにはほとんど差はありませんでした(※2、3)。一部の作物で、有機栽培のほうが糖分や酸味、香り成分が少し高い傾向がありますが、品種や収穫のタイミング、保存方法のほうが大きく影響します。
消費者アンケートでは「味がいいから有機を選ぶ」と答える人が多いですが、これは有機栽培の健康や環境への良いイメージが味の感じ方を変えている部分が大きいといえるでしょう。
※1 Consumer sensory analysis of organically and conventionally grown vegetables - PubMed
※2 When organic products are tasty: Taste inferences from an Organic = Healthy Association - ScienceDirect
※3 You taste what you see: Do organic labels bias taste perceptions? - ScienceDirect

