新たな経営陣で信頼回復なるか

もっとも、イギリスも無策というわけではない。怒りをあらわにした英運輸相のアレクサンダー氏は、新経営陣の下でHS2の立て直しを進めると明言した。

アレクサンダー氏は議会で、歴代の保守党政権によるHS2の杜撰な舵取りが続き、納税者、乗客、そして沿線住民が長年にわたって失望させられてきたことを正面から認めた。

ハイディ・アレクサンダー議員
ハイディ・アレクサンダー議員(写真=©House of Commons/Laurie Noble/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

GOV.UKによれば、彼女は無駄と混乱への怒りに共感を覚えるとしたうえで、「現政権がHS2の新経営陣と協力し、このプロジェクトを生命維持装置から外して再建の軌道に乗せたことを誇りに思う」と語った。

その「新経営陣」を率いるのが、HS2リミテッドのマーク・ワイルドCEOである。ワイルド氏は自らの組織に対し、総事業費932億ポンド(約20兆円)での完成、そしてオールド・オーク・コモン―バーミンガム・カーゾン・ストリート間の列車運行を2037年後半に開始すること、この2つを目標として掲げた。

932億ポンドという水準は当初予算をはるかに上回り、開業も当初想定の2026年から十年以上ずれ込む。ワイルド氏が打ち出した立て直し計画は、すでに大きく狂ってしまった現実を前にした、せめてもの策である。

新幹線にあこがれたイギリスの終着点

迷走するイギリスのHS2。本来、英政府が理想として後を追いたかったのが、日本の新幹線であった。

2023年の夏、当時のマーク・ハーパー英運輸相は、日本の新幹線車内に実際に乗車する動画を公開し、車内から新幹線を絶賛している。

座席に身を委ねたハーパー氏は、「日本の鉄道インフラは、HS2、つまり未来に向けた我が国独自の高速鉄道網で何ができるかを示す、ワクワクするビジョンです」と語り、さらに「これを建設することは、我々がイギリスを信じている証なのです」と続けた。

動画で言及された当のHS2は、それから3カ月も経たないうちに、大幅縮小の憂き目に遭うという皮肉な展開をたどった。

コラムニストのリーディー・ガロウド氏はブルームバーグに、「スナク氏よ、新幹線からリーダーの在り方学べ」とのコラムを寄稿。「英国がまねるべきは、日本の粘り腰だ」と指摘する。

約50年前の「全国新幹線鉄道整備法」で高速鉄道網の拡張計画が掲げられて以来、寄稿当時の2023年までに「25人の首相が交代したにもかかわらず、日本は同じ計画を堅持している」とリーディー氏は称賛。

「日本の経験から何か一つを得たいのであれば、それは諦めないことに価値があるということだ」と述べ、北部区間を諦めたイギリス政府の判断と対比している。