「タテシナ会議は交通事故死ゼロを目指す」
会議の総括として、マスコミを呼んだミーティングがあった。会議の主催者、トヨタの会長、豊田章男は強調した。
「トヨタが長年やってきたことでやめてはいけないことがあるとすれば聖光寺の御参り、そしてタテシナ会議です。とにかく交通事故死ゼロを目指す」
参加者が交通事故死ゼロを信じるようになったのはこの言葉からだった。
ちなみに、交通事故死ゼロを目標とする先行例がある。スウェーデンはすでに国が交通事故による死亡者、重傷者をゼロにするという理念を掲げている。
Vision Zero(スウェーデンの交通安全政策)
基本理念
・交通事故による死亡者・重傷者をゼロにする
・人命は経済効率や利便性よりも優先される
・人はミスをするが、それで命を落とさない道路システムが必要
・運転者だけでなく、設計者や運用者の責任
主な取り組み
・道路の安全設計
・高速道路に中央分離帯設置
・住宅地・学校周辺は時速30キロメートル以下
・安全な車両
・シートベルト・衝突安全技術の普及
・監視と規制
・飲酒運転・速度超過の厳罰化
・歩行者・自転車保護
・専用レーン・信号の整備
事故を起こすのは「乗り物」ではなく「人」
交通事故対策として挙がってくるのは自動車側、つまり、自動車会社への規制が多い。スウェーデンの取り組みでも、「住宅地・学校周辺は時速30キロメートル以下」「安全な車両」「シートベルト・衝突安全技術の普及」「飲酒運転・速度超過の厳罰化」は自動車会社がやるべきこととなっている。日本でも自動車会社はかねてシートベルトの着用を訴え続け、実現した。その他にも数々の交通安全対策を自動車会社として行ってきている。加えて衝突安全技術は進化を続けている。さらに、自動車会社、自動車販売店、部品サプライヤー、損保会社などは地域の警察や行政機関と一緒にさまざまな交通安全の啓発運動を行ってきている。あいおいニッセイ同和損保も福井県、大分県など各地で地元企業と一緒にかなり熱心にやっている。しかし、大々的に報道されることはない。
報道されないこともあって、世間が自動車会社の交通安全の取り組みを知っているとは言い難い。交通事故の主原因はクルマだ、オートバイだと思っている。自動車とオートバイを規制することが事故を減らすことにつながると考えている。
しかし、実際に交通事故を起こすのは自動車、オートバイだけではない。タテシナ会議の資料にあるが、事故の原因は人の行動だ。車に乗っている人、自転車に乗る人、電動キックボードを操る人、歩いている人の行動が事故につながる。行動を変容させなければ事故は減らない。
車に乗っている場合でも事故の原因は車の制御不能、故障よりもやはり人の行動になる。たとえば信号機とそれに対する人の反応だ。


