明石家さんまと「相棒」の奇縁

さんま演じる小清水と田村演じる古畑のテンポの良いやり取りはまさに丁々発止。それだけでも見応えがある。だが最後は法廷の場で、古畑が小清水の小さな勘違いを突破口に追い詰め、とうとう罪を認めさせる。

連行される小清水。その際のやり取りが面白い。

小清水「あんた、ええ弁護士になるな」

古畑「どうもありがとうございます」

小清水「今すぐ、司法試験受けなはれ」

古畑「いやあ、自信ないです」

小清水「できるだけ、早くでっせ」

古畑「どうしてですか?」

小清水「決まってまっしゃろ、僕の弁護するんです。(含み笑いだけで返事をしない古畑に)頼んまっせ」

もちろん現実味はない。だが弁護士も刑事(特に古畑)も、理詰めで相手を説得するという点では似ている。この弁護依頼は、小清水が古畑に対して示した最大限の敬意と受け取れる。

ちなみに明石家さんまは、この回の出演以外にも思わぬところで刑事ドラマの歴史に多大な貢献をしている。

さんまが主演する別のラブコメドラマをたまたま見たテレビ朝日のプロデューサーが脚本の見事さに感動してオファーし、新しい刑事ドラマを立ち上げた。その脚本家が輿水泰弘、そしてドラマが『相棒』である。

古畑の内に秘めた信念

もうひとつ、古畑任三郎の刑事としての矜持が見えた名セリフにもふれておこう。

第1シリーズ最終話となる「最後のあいさつ」。犯人役は菅原文太である。『仁義なき戦い』シリーズなどヤクザ映画のイメージが強いが、テレビドラマ初主演は『警視庁殺人課』(テレビ朝日系、1981年放送)という刑事ドラマだった。

ここでも菅原は、小暮音次郎という警視庁の刑事役で出演している。階級は警視で、古畑の上司にあたる。

小暮の孫娘は2年半前に殺されていた。だが、逮捕された男は証拠不十分で無罪に。とうてい納得がいかない小暮は、入念にアリバイの偽装工作をしてその男を拳銃で撃ち殺す。

被害者家族の復讐劇である。もちろん法的には許されていない。だが感情として理解できなくはない。古畑にアリバイを崩された小暮も、「わかってくれ。俺が法に代わって……」と訴える。

すると古畑は、いつになくきっぱりとした口調でこう返す。「小暮さん、それは違います。人を裁く権利は我々にはありません。我々の仕事はただ事実を導き出すだけです」。

実はこのやり取りの前に、古畑がどんな場面にも拳銃を携行しないことを知って小暮が呆れる場面がある。法を犯しただけでなく、拳銃を使って復讐を果たした小暮に対し、古畑は組織の上下関係を超えて反論したわけである。普段はどこか飄々とした古畑の内に秘めた信念を吐露したセリフとして印象深い。

ほかにも視聴者それぞれの心に残るセリフがあるに違いない。『古畑任三郎』は、紛れもなく名セリフの宝庫だ。

【関連記事】
地方衰退の一番の原因は「人口減少」ではない…山口の超富裕層が「住民税43億円」をまるっと抱えて移住した理由
「子供を自分の作品」にしてはいけない…日本一の進学校教諭が見た「本当に頭のいい子の親」の意外な特徴
ギャンブルでも、旅行でも、美術品収集でもない…和田秀樹が手を出すなという「世の中で一番金のかかる趣味」
「年金だけで暮らす人」は定年前に手放している…大掃除で捨てるべき"老後のお金を食い潰す"無駄なもの2つ【2025年12月BEST】
「ADHDグレー」と診断された子どもたちが高確率であてはまる幼少期からの「危険な習慣」