「普通の刑事ドラマならば引き受けなかった」
田村は、「普通の刑事ドラマならば引き受けなかった」とオファーが届いたときのことを振り返る。その気持ちを変えさせたのは、三谷幸喜の脚本だった。「台本を読んだとたん、これはと思いました。まずなぞ解きが面白い。構成が綿密で余分なものがないから、ぐーっと引きつけられるんです」(『読売新聞』1994年4月15日付け記事)。
一方、田村正和の「生活感のなさ」(同記事)は、三谷幸喜が古畑任三郎というキャラクターに求めていたものにぴったりだった。クールななかにもどこかユーモラスなところのある、どこか浮世離れした古畑の魅力は、デビューから1980年代を経て役柄を広げてきた田村正和にしか出せない味だった。
こうして、田村にとって初の刑事役であり、いまも多くの人たちに愛され、テレビドラマ史に残るキャラクターとなった「古畑任三郎」は生まれた。
「しゃべりすぎた男」の名台詞
当然ながら、田村正和が感嘆した三谷幸喜脚本による『古畑任三郎』には名セリフも多い。
第2シリーズ初回「しゃべりすぎた男」の犯人役となったのが、明石家さんまである。先ほどふれたように、高視聴率をとって『古畑任三郎』を軌道に乗せた回である。
さんまが演じるのは、敏腕弁護士として名高い小清水潔。法廷では立て板に水の弁舌で巧みに相手をやり込める。
証人の女性に自分のことを「いい男でしょ?」と話しかけたりするところなどは、芸人・明石家さんまとも重なって見える。慣れない関西弁を使う古畑に「中途半端な関西弁、使いなはんな」とツッコみ、古畑が「ああ、すんまへん」と答えるところなどはコントさながらだ。
事件は、小清水が大物弁護士の娘との結婚話で邪魔になった別の交際女性を殺してしまうというもの。
運悪く被害者に恋愛感情を抱いていた今泉(西村雅彦[現・西村まさ彦])が小清水に陥れられ、逮捕されてしまう。そんな裏があることなどまったく知らない今泉は、よりによって小清水に弁護を依頼。だが古畑は小清水に疑念を抱き……、という展開である。
古畑がいつもの邪険な扱いとは打って変わって今泉を「友人」と呼び、窮地から救うという熱い回でもある。

