映える「レアハンバーグ」にある危険性
ハンバーグに箸を入れると、中は「ほぼ生」で真っ赤――。
近年、SNSや動画サイトを中心に、こうした「レアハンバーグ」が注目を集めています。鉄板の上で自分好みに仕上げるスタイルや、「中はほぼ生」に見えるようなハンバーグを売りにした店も見られるようになりました。
一方で、こうした“生っぽいハンバーグ”による食中毒事故も実際に起きています。
「焼肉やステーキではレアで食べることもあるのに、なぜハンバーグは危ないのか」
そう感じる人もいるかもしれません。
しかし、同じ牛肉でも、ステーキとひき肉では食中毒リスクの考え方が大きく異なります。牛肉そのものが一律に危険というわけではありません。大切なのは、肉の形状や加工の違いによって、どのようなリスクがあるのかを正しく知っておくことです。
なぜここまで「レアハンバーグ」が広がったのでしょうか。
背景には、SNS映えや動画映えの影響があります。ナイフを入れた瞬間に流れ出す肉汁や、赤みを残した断面は視覚的なインパクトがあり、飲食店側にとっても差別化しやすい要素になりました。
また、低温調理の広がりも、「赤い肉=上質」「火を入れすぎないほうがおいしい」という印象を強めた面があります。
ただ、「生に近いほど価値が高い」というのは誤解です。本来、肉には形状や料理に応じて火入れしたほうがおいしいもの。特に牛肉は、適切に火を入れることで香りや旨味が引き立つ食材です。
「牛肉はあまり焼かなくていい」は誤解
一般的に、牛肉は豚肉や鶏肉と比べ、「中心部までしっかり火を通さなくても食べられる」というイメージを持たれることがあります。
その理由のひとつは、食中毒の原因となる菌が、肉の内部ではなく表面に付着していることが多いと考えられているためです。ステーキのような一枚肉や塊肉では、表面を十分に加熱することで、リスクを抑えやすいとされています。
しかし、ハンバーグは事情が異なります。
ひき肉は、肉を細かく挽き、全体を混ぜ込んでつくる食品です。その過程で、本来は表面に付着していた菌が、内部まで入り込む可能性があります。つまり、外側だけを焼いていても、中心部に菌が残るおそれがあるのです。
このため、ハンバーグやメンチカツのようなひき肉料理では、中心部まで十分に加熱することが食中毒予防の基本になります。
厚生労働省も、ハンバーグなどの生のひき肉から作られる製品は、病原体が中心部まで入ってしまうため、中心部までしっかり火を通すことが重要だと示しています。多くの病原体は、75℃で1分間以上の加熱で死滅するとされています。
O157による食中毒
とくに注意が必要なのが、腸管出血性大腸菌O157などの細菌です。少量でも発症することがあり、子どもや高齢者では重症化することもあります。牛肉を含む食肉では、サルモネラ属菌やカンピロバクターなどにも注意が必要ですが、いずれも基本は中心部まで十分に加熱することが予防につながります。
「新鮮な肉だから大丈夫」という説明を聞くこともありますが、鮮度と食中毒リスクは別の問題です。新鮮であっても、菌が付着していれば、加熱が不十分な場合に食中毒につながるリスクがあります。
レアハンバーグによる食中毒は、実際にしばしば発生しています。
つい最近の2026年4月には、横浜市内のハンバーグ店で腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生したと横浜市が発表しています。
患者は20代女性2人で、いずれも同じ施設で食事をしていたことなどから、同施設での食事を原因とする食中毒と判断されました。横浜市の発表資料によれば、ハンバーグは客が自席で自ら加熱する方式で提供されていたとされています。
こうした事例は、「赤いハンバーグ」や「レア感」を売りにする提供方法について、改めて安全性を考えるきっかけになります。
