使わざるを得ない状況を、設計できたか
このデータからは、B群のほうがTOEICスコアの伸びと帰国後の学習継続率が高かったという相関が見られます。ただし、上記のとおり両群には複数の属性差があるため「専門科目を並走させたこと」が直接の原因であるとは断定できませんが、この結果から一つの仮説を立てることはできます。筆者はこの差を、授業の質そのものというより、授業外行動の量と質の差、すなわち「英語を使わざるを得ない状況を、自分で設計できたかどうか」に起因するのではないかと解釈しています。仮説は以下のとおりです。
・明確な専門目的があると、英語は「学習対象」から「手段」に変わる
・専門分野を学ぶ過程で、必然的に英語を「使わざるを得ない」場面が増える
・学んだ専門知識を帰国後も活用できるため、英語学習のモチベーションが持続しやすい
これらは今後、機会があればより厳密な研究による検証をしてみたいと思っていますが、「何のために英語を使うのか」という目的意識が、学習効果に影響を与える可能性を示唆するデータとして、参考になりうる探索的パイロット調査であったと思っています。
短期語学留学を勧めないワケ
実際、海外に長年住んでいても日常会話もおぼつかないというケースは少なくありません。なぜなら、現代の都市では、同じ言語を話すコミュニティーに閉じこもることが可能だからです。日本人コミュニティー、日本食レストラン、日本語が通じる店──便利ですが、これでは英語を使う必要性が生まれません。
留学中の方や関係者にはお叱りを承知でお話ししますと、数週間程度の短期語学留学は、異文化体験としては貴重ですが、語学を向上させるには個人的にはお勧めしていません。費用と時間の効果を最大化するためには、留学前の綿密な準備、現地でのアウトプット量の確保、帰国後の継続的な学習が必要です。
1 明確な目標設定
「3週間で日常会話ができるようになる」ではなく、「ビジネスプレゼンの基本フレーズを20個使えるようにする」など、具体的で測定可能な目標を
2 事前準備の徹底
基本的な文法や語彙は日本で習得しておき、現地では「使う」ことに集中する
3 帰国後の継続計画
留学で得た勢いを維持するための具体的な学習計画を事前に立てておく
「ネイティブのようになる」というプレッシャーや、「留学すれば何とかなる」という安易な期待。これら2つの神話が、日本人の英語習得を阻んでいます。真に効果的な英語学習のためには、この2つの認識を転換することが必要なのです。
2 環境依存ではなく、明確な目的を持ち、その目的達成のために英語を「使う」


