「海外に行けば英語が話せる」という幻想

「海外に行きさえすれば、英語が話せるようになる」。これも、日本人に根強い幻想の一つです。

10年ほど前、企業の若手社員向けに、海外ビジネススクールの短期プログラムを調査する機会がありました。UC Berkeley Extension、UCLA Extension、Harvard Extension Schoolなど、数週間から数カ月の集中プログラムです。これらに参加した日本人の方々をヒアリングして、気づいたことがあります。

筆者が2013年に実施したExtension Program参加者へのヒアリング/アンケートを集計すると、次の傾向が見えました。比較のため、参加目的の性質により、参加者を「英語力向上」を主目的とするA群、「英語で専門科目を学ぶ」ことを並走させるB群の2群に分類しています。

【A群】語学力向上中心(6カ月)
調査対象n=44(20代後半~30代前半中心、社会人比率約6割)
参加期間24週間(約6カ月)
参加前スコアTOEIC450~650(中央値520)
平均伸び+65点(IQR:+30~+95)
スピーキング自信度
(10点満点の自己評価)+0.8(例:4.6→5.4)
帰国後の継続学習率(※1)28%
【B群】専門科目並走(3カ月)
調査対象n=42(20代後半~40代、社会人比率約8割)
参加期間12週間(約3カ月)
参加前スコアTOEIC600~850(中央値725)
平均伸び+128点(IQR:+85~+165)
スピーキング自信度
(10点満点の自己評価)+2.2(例:4.7→6.9)
帰国後の継続学習率(※1)74%
専門知識の習得満足度(※2)(5点満点)4.3

※1 帰国後3カ月時点で週3回以上・各30分以上の学習を継続
※2 例:マーケティング基礎、データ分析(統計入門、可視化、SQL基礎)など
※本データは2013年に筆者が実施した探索的調査(n=86)に基づく参考情報である。以下の交絡因子を統制できていないため、因果関係は断定できないことを了承ください。

・参加者の自己選択によるプログラム振り分け(無作為割付ではない)
・両群のベースライン英語力の差(A群中央値520、B群中央値725)
・参加期間の差(A群6カ月、B群3カ月)
・社会人比率・年齢層の差