英語は誰かの「所有物」ではない

世界的な英語学者デイヴィッド・クリスタル(David Crystal)は、著書 “English as a Global Language”(Cambridge University Press、第2版2003年)の中で、示唆に富む議論を展開しています。「国家的・文化的アイデンティティーの必要性と、互いに言葉が通じ合うこと(intelligibility)の必要性は、しばしば対立するものと見なされがちだが、それは誤解であり、両者は十分に両立しうる」というのが彼の主張です。

モダンなコワーキングスペースで一緒に働く多様なチーム
写真=iStock.com/miniseries
※写真はイメージです

クリスタルが提唱するのは、グローバル言語(世界コミュニティーへのアクセスを提供する)と地域言語(ローカルコミュニティーへのアクセスを提供する)を併せ持つバイリンガリズムです。この2つの機能は「補完的(complementary)」であり、異なるニーズに応えるものだと彼は論じます。

さらにクリスタルは、英語がもはやネイティブスピーカーの「所有物(property)」ではないという現実を強調します。世界中で15億人以上が英語を使用し、非ネイティブスピーカーがネイティブスピーカーの3倍以上を占める現在、英語は特定の国や文化に帰属する言語ではなく、真の意味での「国際共通語」となったとすれば、日本人は日本人として、中国人は中国人として、それぞれの文化的アイデンティティーを保ちながら英語を使えばいい。これが、クリスタルの論から導かれる一つの結論です。