協力する自治体が少しずつ増えていった
2000円、3000円のオプションを付けたとしても、リサイクル事業は薄利多売のビジネスには違いない。ビジネスを効率よく運営していくためには、もう一手が必要だった。
「私たちのサービスはどこで売るのが最も効率よく、ニーズのあるお客様にリーチできるのか考え、『自治体発行のゴミ分別表』に思い至りました。お客様に安心して私たちのサービスを利用していただくには、自治体の行政サービスとしてお知らせするのが一番です」
家庭の冷蔵庫などに貼ってある、地域のごみ分別表。そこに、「小型家電回収の依頼先」としてリネットジャパンの連絡先が記載されていれば、その効果は絶大だろう。しかし、そのためにはまず自治体との連携が必要だ。
前例のない提案に、始めはどこの自治体も最初は二の足を踏んだ。しかし、黒田さんの熱心な説明を受け、本社所在地の愛知県大府市を筆頭に、ちらちらと協力者が現れ始める。
「潮目が変わったと感じたのは、福岡市から声がかかったことでした。高島(宗一郎)市長は、新しいことを積極的に取り入れている。そのアンテナに私たちの事業が届いたのでしょう。いきなり政令指定都市が参加してくれたことで、京都市、熊本市と、協定の輪は一気に広がっていきました」
情熱は波及する。リネットジャパンは、現在全国758を超える自治体と協定を締結し、実に9000万人もの人口をカバーする事業に発展していった。
挫折経験が「資源のない国」を変える
日本の都市には金が約6800トン、銀が約6万トン蓄積されているという。いずれも世界埋蔵量の1、2割に相当するとされ、日本は「都市鉱山大国」とも呼ばれている。
ほぼすべての鉱物資源を輸入に頼る日本にとって、都市に眠る金属は「もう一つの鉱山」だといえる。資源価格の高騰や国際情勢の不安定化が続く昨今、国内の金属自給率を高めるための事業は、国策としてより重要視されていくだろう。
2000年代、黒田さんは「日本のAmazonになる」と、若さと勢いでトヨタを辞めた。しかし、成長と利益追求競争に破れ、時代の寵児になることはかなわなかった。キラキラと輝くITベンチャーの世界からはじき出され、黒田さんは不味くて誰も手を出さない、「都市鉱山」という実に手を伸ばした。
「社会にいいことでビジネスをするって、成り立たないと思われがちですよね。だから、ひとひねりするんですよ。アイデアと企画力さえあれば、両立するものなんです」
日本の家庭には、使われていない携帯電話やスマートフォンが約7億台眠っているという。窓の外には、広々とした濃尾平野を覆いつくすように、住宅街が広がっていた。
20年前、ITベンチャー社長として先頭争いをしていた黒田さんはいま、周回遅れで時代の最先端に立っている。




