「100人中99人に『無謀だ』って言われましたよ」
黒田さんは32歳でトヨタ自動車を退社し、1998年にブックオフコーポレーションの起業家支援制度第1号として、株式会社ブックオフウェーブを設立。2000年には中古書等宅配買取・EC販売の「株式会社イーブックオフ(のちにネットオフ株式会社に社名変更)」を立ち上げた。
かつては楽天の三木谷浩史氏やライブドアの堀江貴文氏のように、ITベンチャーを目指していた。「日本のAmazonになる」という野望を抱いて、若くしてトヨタを辞めたのだ。しかし、ITバブル崩壊、リーマン・ショックと立て続けに上場を阻まれ、事業売却まで考えていたころに出会ったのが、「都市鉱山」事業だった。
本格的にリサイクル業に参画したのは2013年、小型家電リサイクル法が施行されたころだ。
「事業を開始したときには、100人中99人に『無謀だ』って言われましたよ」と、当時を振り返る。
「都市鉱山」という言葉が示すとおり、パソコンやスマートフォン、小型家電のなかには金属資源が含まれている。家庭内に眠るそれらを回収して再利用できれば、鉱物資源に乏しい日本でも、輸入にばかり頼らずにすむだろう。
しかし、実際はそう簡単ではない。当時は体系的な回収・再資源化の仕組みが存在せず、小型家電の多くは粗大ごみや不燃ごみとして回収・廃棄されていた。携帯電話やパソコンは個人情報漏れの不安から、捨てられずに家庭内にそのまま眠るケースがほとんどだ。
「都市鉱山」を阻んだ壁
回収したとしても含まれる資源金属はごくわずかでコストに見合わず、安定した収益モデルを作りにくいビジネスだったのだ。
「ビジネスモデルを確立することは、簡単ではありませんでした。しかし、私たちには宅配買取のパイオニアとして、中古本などの買取、販売を実施してきた実績がある。この仕組みを応用すれば、ビジネスとして成功させることは可能だという確信がありました。そして、一度課題をクリアしてしまえば、参入障壁は後続の企業を阻む壁となってくれるはずです」
2013年、都市鉱山リサイクル業を担うべく、黒田さんはネットオフの子会社として、リネットジャパン株式会社を立ち上げた。
最初に立ちはだかったのは、「認定事業者」の壁だった。
小型家電リサイクル法上の回収、解体、再資源化を行う事業者になるためには、環境省、経済産業省からの認定を取得しなければならない。しかし、当初の認定対象は中間処理事業者が中心で、回収業務は自治体が主体的に担うことが想定されていた。
「役所や公民館などに設置された回収ボックスに市民が自ら持っていくのが、想定されていた回収方法でした。しかし、いくら無料の回収ボックスがあっても、わざわざ持っていくのは面倒です。
さらに、パソコンや携帯電話の場合、データ漏洩の心配もある。処理業者がいても、回収できなければ意味がない。私たちの強みである宅配買取を生かさなければ、この制度は絶対にうまくいきません」


