家電から希少な金属を取り出す
次のエリアには、パーセンテージが表示されたモニターが並んでいる。ここでは、「Blancco(ブランコ)」という国際的に認められた消去ソフトを使用し、ソフトウエアによる上書き処理によってデータの完全消去を実施している。「65%完了、残り38分」という、作業進捗のパーセンテージと完全消去までの時間が、モニターに映し出されていた。
「電源が入る記憶媒体は、ここでデータ消去を行います。古い機器や、そもそも電源が入らないものは、次のエリアで『物理破壊』します」
記憶媒体となる基盤が、シュレッダーに吸い込まれていく。バリバリと金属を噛み砕くような音。
「すべてを物理破壊してはだめなのか」と聞くと、「リユースできるものは活用している」と答えが返ってきた。シュレッダーで壊せないものは、次のエリアで従業員が手作業で解体する。ねじを外し、金属をはがし、部品の素材によって分けていた。
作業着に青いエプロン姿の従業員が行き交うなか、黒田さんの背筋の伸びたスーツ姿はよく目立つ。かつて野心的な起業家だった名残か、柔らかく穏やかな口調に対して周囲を見渡す視線は鋭く抜かりない。
ITバブル崩壊が、あと少し遅かったら
約25年前、黒田さんはITバブルの波に乗り、「日本のAmazon」を目指して起業した。目の前には楽天の三木谷浩史氏、ライブドアの堀江貴文氏など現在でも名高い起業家の背中があった。ITバブルの崩壊があと少し遅かったら、今ごろは……。
「ここで解体作業に当たっている従業員のなかには、ハンディキャップがある方もいるんです。現在は25名、全体の約3分の1ですが、事業が大きくなればなるほど、障がい者の方を雇用することができます。収益と社会性を両立し、『ビジネスを通じて偉大な作品を創る』。それが私たちの経営理念なんです」
不用品だらけの倉庫の中で、耳の奥に響く金属音にかき消されないよう、黒田さんは大声で夢を語った。


