資源の海外流出を止められなかった
その言葉のとおり、法律施行後も家電リサイクルはなかなか進まなかった。回収ボックスの設置や広報などは努力義務とされたため、財政余力のある自治体しか動けない。制度開始後しばらくは、回収業務を実施している自治体は全体の半数以下に止まった。
一方で、国内リサイクルよりも海外輸出の方が儲かる構造は変わらず、貴重な資源の海外流出の流れを止められなかった。
「ネットオフ」の中心事業は、中古書等の宅配買取とECサイトでの販売だ。2012年には1年間で最も多く中古本をインターネット販売した会社として、ギネス世界記録認定も受けている。
このネットリユース事業で培った全国規模の宅配買取ネットワークが、制度の「ラスト1マイル」となるはずだと、黒田さんは確信していた。
そこで、まずは多くの人に知ってもらうため、東京で大規模な記者会見を実施。環境省に何度も足を運び、配達回収の意義を繰り返し説明した。最終的には事業パートナーである佐川急便の協力が追い風となり、2014年1月、ようやく小型家電リサイクル法の大臣認定を取得する。
この事業が、会社を大きく飛躍させていくはず。同年10月、社名をこれまでのネットオフ株式会社から「リネットジャパングループ株式会社」に変更、都市鉱山リサイクル業を事業の中心に据えた。
「送料無料」が突破口になった
次に立ちはだかったのは、黒字化の壁だった。
宅配回収サービス開始当初は、回収料金を980円に設定していた。しかし、実際にサービスをスタートしてみると、ほとんど申し込みがない。
「もう、1日10件程度しか申し込みがないんですよ。これでもギリギリ利益が出る価格設定にしているので、500件、100件なければ事業として成り立ちません。あれだけ許認可を取るのが大変だったのに……。考えてみれば、これまで無料回収が当たり前だったのだから、お金なんて払いたくありませんよね」
ユーザーにとっては、お金を出すなら欲しいものを手に入れたい。家に眠る不要物になどお金をかけたくない、というのが本音だろう。
1日10件から20件程度の申し込みの日々が1年ほど続き、遂に黒田さんは回収料金無料の決断に踏み切った。
「しかし、回収料金を単に無料にするだけでは、ビジネスは成り立ちません。回収にお金を払ってもらえないなら、他のサービスで収入を得るしかないと、ビジネスの発想を転換したんです」
まず考えたのが、パソコンや携帯電話のデータ消去サービスだった。パソコンが入っていれば回収料金は無料、一方でオプションとして有償データ消去サービスや消去証明書の発行、データ移行サービスなどを用意した。自分で段ボール箱を用意するのが面倒な人向けには、有料の段ボール提供サービスも開始した。
これが、顧客に刺さった。それまでの約20倍もの申し込みが殺到、メディアにも取り上げられたことで、徐々に売り上げは上がっていった。



