英語圏版カイル、「クリッピー」の末路
カイルは、オフィス97の日本語版で初登場した。のちに他地域にも配信されたが、手動での追加ダウンロードが必要となっており、事実上は「日本のキャラクター」だったとも言える。
英語圏で同じ役を担ったのは、ペーパークリップ型のキャラ「クリッピー」だ。オフィスへの初登場は1997年。こちらも苦情が絶えず、2001年には早くも初期状態で無効化される事態に追い込まれたと、米ビジネス誌のフォーチュンが顛末を振り返っている。
それから長い空白の期間を経て、昨年10月、マイクロソフトはコパイロットの「顔」となる新キャラクターを世界向けにアナウンス。そこでは「ミコ(Mico)」と呼ばれる液体状のキャラクターを発表していた。
今回のコパイロットの主役は、あくまでも「“Mi”crosoft “Co”pilot」の略であるミコだ。同社は、「温かみがあり、表情豊かで、使用は完全に任意」と説明する。あえて「任意」と言い添えるあたり、強制表示で不評を買ったかつてのオフィス アシスタントの教訓は身に染みているのかもしれない。
実はミコには、イースターエッグ(お遊び的な隠し要素)が仕込まれている。米スタートアップ情報メディアのテッククランチによると、繰り返しクリックすると、往年のオフィスアシスタント、クリッピーに変身するのだ。ただし、隠し要素に過ぎず、大々的に四半世紀前のキャラクターを復活させたのは日本語変換ソフトだけとなる。
「黒歴史」を自虐ネタにする社風
日本向けのカイルの復活は、過去の「黒歴史」を受け入れる茶目っ気のあるアクションだ。お堅いイメージも強いマイクロソフトだが、実際のところ、自社の黒歴史を笑いのタネにする意外な一面を持つ。
不評で消え去ってしまったクリッピーも、その一例だ。米PC専門サイトのトムズ・ハードウェアによれば、2001年に初期状態で無効となる仕打ちを受けたものの、同年にリリースされた「オフィスXP」ではオプション機能としてしぶとく、そしてひっそりと残っていた。
当時マイクロソフトは、アインシュタインやシェイクスピアの誇張した似顔絵、そして犬の「ロッキー」といった代わりのキャラクターまで用意していたのだから、アシスタントをキャラ化するという発想にかなりのこだわりがあったことが窺える。
2007年になるとマイクロソフトはオフィスを刷新し、すべてのキャラを消した。
だが、完全廃止から12年。マイクロソフト社内では、封印したはずのクリッピーへの愛が再び高まってゆく。2019年3月、オフィスや会議・チャットアプリのチームズ(Teams)を担当するデザイナーたちが、クリッピーのイラスト集をリリース。ライン(LINE)で言う「スタンプ」に相当する「ステッカーパック」を、ソフトウエア共有プラットフォームのギットハブ(GitHub)で無償公開している。
