ケーキは佳子さまに、マドレーヌと焼き菓子は…
さて、冒頭で紹介したテレビ番組「朝メシまで。」が放送された翌日、北原製パン所には開店前から長い長い行列ができていた。
「開けたらこっちがびっくりしちゃって……。『これはダメだ』と思って、急いであるパンを全部出した。その日はもう早く店が閉まったよね。お昼頃にはなくなっちゃったんだから」
それからしばらくは、早々に売り切れてしまう日が続出した。また、番組が全国ネットで放送されたことで、沖縄や滋賀など、遠方からわざわざお客さんが訪ねて来るようにもなった。別の日には、来店した40代の男性が「今の仕事を辞めようかと思ってたけど、俺もがんばんなくちゃいけないなと思って」と北原さんに感謝を伝えてきたこともある。番組が再放送されると、「今テレビ見てるんだけど、がんばってくださいね」と福井県から激励の電話をかけてきた人もいた。
そうした反響が続いているときに店にやってきたのが、秋篠宮殿下の旧友だった。宮内庁へ「ポテチパン」が届けられると、とても喜ばれたという。
「殿下がむしゃむしゃ食べるもんだから、『そんな食い方するなよ』ってご友人が言ったらしいんですよ。『よっぽど美味しかったのかね』って笑ってましたね」
相当北原さんのパンを気に入ったのか、同年12月には特製クリスマスケーキの注文が入り、翌年3月にはマドレーヌと焼き菓子の注文が入った。ケーキは次女の佳子さまに、マドレーヌと焼き菓子は、ニューヨークに住む長女・眞子さんと小室圭さん夫婦にも送られたそうだ。
手のひらが物語る、職人人生
取材が終盤に差し掛かった頃、北原さんはこう切り出した。
「ロケットあげるのもいいけど、この仕事もまんざらじゃなかったんだなって、自分で納得できるよね。やっぱ人っていうのはさ、真面目に一生懸命やってると、救われるのかなと思ってさ」
目線の先には、くっきりと深いしわが刻まれた手が、固く握られている。来る日も来る日も、街が寝静まった深夜3時から、仕込みを続けてきた手だ。
「真面目に一生懸命やってると、救われる」――その言葉が、じわりと胸に響いた。



