ノルウェー発の「衝撃的な論文」
そんな中で、今年、『Politics and the Life Sciences』誌に掲載された論文が大きな波紋を広げています。
論文は「Toward individualistic reproduction: Solving the fertility crisis could require a further marginalization of men(個別主義的再生産に向けて~少子化危機を解決するには、男性の排除が必要となるかもしれない)」(ノルウェー科学技術大学Mads Larsen他)というもので、タイトルからして不穏な空気が漂います。
とはいえ、この論文の前段の課題の整理は実に真っ当です。同論文では、現在全世界で起きている少子化のメカニズムを、以下のように喝破しています。
・女性の教育・就労が進み、経済的に自立すると、パートナー選択の基準がより厳格化する。
・経済力・社会的地位・性格・容姿など「価値の高い上位の男性」しか選ばれなくなる。
・マッチングアプリなどのツールは、この選好をより加速させ、上位の男性に女性の注目が集中する。
・しかし、一部の男性に希望が集中しても、選ばれる女性もまた一部でしかない。
・「価値の高い上位の男性」とマッチングしないなら、経済的に自立した女性は一人を選択する。
・最終的には、カップル成立が困難となり、非婚が増加し出生率も低下する。
ここまでは全く異論はありませんし、欧州だけではなく、日本および韓国や中国で起きていることもその通りです。
「国家が子どもを金で買う」という世界
が、この論文が衝撃的なのは、それら課題をふまえての処方箋のほうです。
もはや、カップル成立増も、伝統的な夫婦による出生増も現実的に困難であると結論づけ、女性が単独で子を産み育てる「個別主義的再生産」を推進せよと提言しています。
要するに、もはや男女によるカップルなど作らなくてもいい。「国家が未婚女性に対し、経済的・社会的資源を十分に提供し、一人で子どもを妊娠し出産し、出産後も一人で産み育てられるようにする。一人で産み育てたほうが子無しになるより合理的だと女性が価値観転換できるまで支援する」という内容です。そこには、もはや夫・父という存在は消滅します。
この論文の著者らはこれを「理想的ではない」と一応断りながら、「国家の存続のためには避けられない現実策だ」と位置づけています。
拡大解釈すれば、「国家が子どもを金で買う。女は国の妾として子を育て、男はただ労働して納税すればいい」という世界です。
当然、この論文には多くの批判が集まりました。海外では、「国家が父親の代わりになるなど国家主義の極み」「家族を解体させる考え」「金目当ての出産が増える」との声が相次ぎました。日本国内でも同様です。
