JAが恐れる食料品の消費税ゼロ
食料品の消費税がゼロとなると、通常の事業者なら、売り上げにかかる税額ゼロから受け取ったインボイスにより農薬等の仕入れにかかる税額60万円を控除することができ、国から60万円の還付を受けられる。しかし、消費税の制度の外側にある免税事業者は、農薬等の仕入れにかかる税額60万円を控除することはできない。農薬等の仕入れ税額をまるまる負担しなければならなくなる。これまで20万円の利益を受けていたのに60万円の負担となる。現状から比べると80万円の負担増だ。
もし、免税事業者である零細農家がこの負担増を次の取引相手に転嫁しようとすると、取引相手は大規模農家と取引する方が安く農産物を購入できるので、免税事業者は流通過程から排除されてしまう。
食料品の消費税が1%のときでも、上記の特例措置によりJA農協が免税業者の代わりにインボイスを発行したとしても、売り上げの消費税として受け取れるのは8万円に過ぎず(益税が減少)、仕入れ税額60万円から8万円を引いた52万円が、免税業者の負担になる。JA全中は、これを救済してほしいと言っているのだ。
しかし、これまで棚ぼた的な利益を得てきた人たちが、今度は不利益を受けるといって救済すべきなのだろうか? 嫌なら本則課税事業者となればよい。それが公正公平な措置だろう。
給付付き税額控除を行うべき
社会保障国民会議の中間報告が、どのようなものになるかはわからない。
食料品の消費税ゼロや1%は、巨額の財源不足や財政悪化、円安を通じて、むしろ物価高を悪化させる危険が大きい。唯一期待できるのは、零細農家の退出による日本農業の生産性向上や農地集約という効果だが、JA農協が零細農家の仕入れ税額相当額(前の例では60万円)などの給付措置(零細農家への直接支払い)を要求して実現してしまえば、それもなくなってしまう。JA農協の政治力を使えば難しくはないし、国会での討論を聞くと自民党農林族議員もそのつもりのようだ。百害あって、一つしかない一利も消されてしまう。
食料品には高級な牛肉、キャビア、ワインなど高額所得層ほど多く支出する商品も含まれる。食料品の消費税ゼロは、低所得者を救うのではなく高額所得層をより利することになる。低所得者対策が必要なら、食料品の消費税ゼロではなく最初から給付付き税額控除を行うべきだろう。
また、2年後に給付付き税額控除を実現し食料品の消費税を元の8%に戻すというが、これは政治的に可能なのだろうか? 経済だけでなく社会に混乱を招くだけのように思われる。
本来、物価高対策として向き合うべきは、減反政策によって高止まりしたコメ価格の問題である。しかし政治家たちは、農業票やJA農協との関係を恐れ、その本丸には踏み込もうとしない。むしろ目を背けている。
食料品の消費税ゼロという耳あたりのいい政策の陰で、「物価高の元凶」への議論そのものが封印されているのである。



