マクロ経済から見た「最悪の愚策」

そもそも食料品の消費税ゼロで5兆円もの財源を喪失するうえ、高市総理によって“責任ある積極財政”が推進されれば、財政赤字・支出の増加による金利の上昇が経済を圧迫する(住宅ローンの利払い増加、投資の抑制など)だけでなく、国債の利払い増加で財政赤字のさらなる拡大を招く。ツケを回されるのは我々の子孫たちである。日本はますます貧しくなる。しかし、高市総理が、このような事態を気に掛ける様子はない。

通常なら金利の上昇は円高に働くが、財政規律の低下による日本(円)売りに加え、同じく物価高に直面しているアメリカでも金利がなかなか低下しない中では、円安がさらに進み、輸入物価の上昇でインフレが加速する恐れがある。先に物価高対策として行うには支離滅裂と書いたのは、このためだ。

こうしたマクロ経済上の問題だけでなく、そもそも物価高対策としても熟慮された提案ではない。政策効果に乏しいばかりか、既得権を優先して、優先順位の高い他の政策には目を向けようともしない。

今回の物価高を招いた大きな要因はコメである。

【図表】長期的な主食用米の価格の動向
出典=農水省HPより

高市総理は、コメの価格を下げるのではなく、減反を維持強化し米価を維持する方向に政策の舵を切っている参考記事)。原油やガソリンの価格が上がることに対しては対策を講じるが、既得権が絡むコメ問題については価格を下げるどころか上げようとしている。減反を強化して、コメの生産を減少させ、食料安全保障だけではなく国の安全保障を危うくする。

農業票に縛られている日本の政治家

しかし、高市総理だけが支離滅裂なのではない。政党の多くは、この物価高対策の根本的な矛盾を指摘しようとしない。ほとんどの政党は食料品の消費税ゼロを支持している。また、ガソリン価格の高騰に対しては補助をすべきだと主張しても、コメをはじめ農産物の価格を下げるべきだと主張する政党はない。

国民のだれもが食べるコメよりも、ガソリンの方が大切なのだ。ガソリンへの補助は、その消費が多いベンツなどの高級車を運転する高所得者を利する。ガソリンが高くなれば、電車など他の公共交通機関の利用が進む。ガソリンだけでなく石油製品の価格上昇によって化石エネルギーから他のエネルギーへの代替・転換が進めば、地球温暖化対策にも貢献する。ガソリンへの補助は、好ましいエネルギーへの転換を阻んでしまう。公共交通機関が少ない地域には、バスの運行や自家用車の共同利用への補助など特別な対策を講じればよい。しかし、国会論戦でこのような議論は聞かれない。国家としての大局観を持たない政治家たちなのだ。

逆に農業については、どの政党も農業の既得権とそれが抱える農業票を逃がしたくない。減反を強化するという高市内閣の主張に、物価高対策だけではなく国家安全保障の見地からも反対する政党はない。小さな問題は国会論戦の対象となっても、国家の全体利益に関わるような大きな問題に取り組もうとする政党は皆無だ。政治家の人たちは自ら情けないと思わないのだろうか?