「経済力」の枷から解放された女性
女性側目線についてはどうだろうか。「永久就職」という言葉は今ではほとんど聞かなくなったが、筆者が小中学生くらいの時期(1990年代半ば〜2000年代初頭)には、テレビ番組などでまだ使われていたような記憶がある。
いずれにせよ、女性にとって「結婚」=「永久就職」という感覚が消滅した理由は明確で、女性の社会進出および経済的自立が大幅に進展し、その影響もあって「専業主婦」が大幅に減少したためだと考えられる。
逆に言えば、有形無形の女性差別が多く残存しており、女性の経済的自立が阻害されていた時代(典型的には、1986年の男女雇用機会均等法施行前の時代)においては、女性にとって人生の選択肢が現実的に少なかったため、結婚が最もコスパのよい選択肢であることが多かったのだろう。ただし、言うまでもなく専業主婦には専業主婦の苦労があり、企業等の上級ポジションが女性に開放された現代においては、「永久就職=専業主婦化」よりも、企業で働く方が良いと判断する女性が多くなっているものとみられる。
男性は「社会的承認」の枷から、女性は「経済力」の枷から解放されて、「結婚はしてもしなくてもいいもの」という意識が社会に浸透していった。そのように結婚が選択的なものとなる中で明らかになったのは、前述の通り「いい人がいない」という悲しい現実である。
条件を下げてまで結婚したくない
少し古い調査だが、明治安田生活福祉研究所(2017)「35〜54歳の結婚意識に関する調査」によると、30代後半〜50代前半の未婚男女に対して「結婚に対する気持ち」を問うたところ、「理想・条件を下げるくらいなら結婚したくない」と回答した人が男女とも2割強に上っている。逆に、「理想・条件を下げてでも結婚したい」との回答は1割に満たない。こうした調査結果からも、結婚が選択的なものとなったことが確認される。
実際、50歳時点での未婚率(いわゆる「生涯未婚率」)もこの数字に近いので、「どうしても結婚したかったけれど、何らかの理由で結婚できなかった」という人より、「いい人がいれば結婚してもよかったが、結果的に良い人がいなかったので結婚しなかった」という人のほうが多いのだろう。
逆に言えば、結婚が義務的であった時代、すなわち、男性にとって結婚による「社会的承認」が、女性にとって結婚による「経済力」が「必須アイテム」だった時代においては、「独身のままでいる」よりは「妥協に妥協を重ねた相手と結婚する」ほうが得という判断だったのだろうが、価値観の変化・社会の変化に伴い、現在は逆の判断になっているのだろう。


