一時期は主流となった「職場結婚」

1970年代からは恋愛結婚が結婚経路の主流になったわけだが、具体的には何をきっかけに恋愛をしていたのだろうか。1990年代以降に主流になったのは、「職場」をきっかけとする結婚、すなわち職場結婚である(図表4)。

阪井裕一郎(2024)『結婚の社会学』は、かつての皆婚社会を支えてきた1つの要因としての企業社会を「マッチメーカー」と位置付けたうえで、先行研究に言及しつつ「当時の恋愛結婚は、実際には『企業によって身元保証された男女』が帰属意識の高い集団のなかで配偶者を見つけるというかたちをとった」と指摘し、併せて「企業側(上司)が従業員の結婚問題に気を配ることは、ごく自然なことであったに違いない」とも述べている。

つまり、「半強制結婚システム」の運営主体が、親をはじめとする「親族」から「企業の上司」へと移行する形で、皆婚社会の延命がなされたような格好である。

職場結婚の代わりに増えた「結婚経路」

ただし、様々な角度から論じた通り、現代の若年層は「企業と自分が一心同体」などとは全く思っていない。エンゲージメントスコアの低さにも表れているように、会社なり上司なりに対する信頼感は基本的に低い。

そうしたもとで上司が職場の男女を無理にくっつけようとしてもまさに迷惑でしかないだろうし、そもそも「未婚の部下を結婚させなきゃいけない」という発想自体が今日のハラスメント基準のもとではセクハラやマリハラ(マリッジ・ハラスメント)に該当するおそれもある。したがって企業のマッチメーカー機能は今日ではほぼ消失し、実際に「職場」きっかけでの結婚は緩やかに減少している。

なお、代わりに最近増えている結婚経路は「ネット」である。具体的にはマッチングアプリが多いとみられるが、こうしたマッチングアプリの浸透が結婚行動にどのような影響を与えるかは注目に値する。昔ながらの「結婚相談所」などに比べればハードルはかなり低いし、アルゴリズム設計がしっかりしていればマッチング効率もある程度高いのかもしれない。

ただし、マッチングアプリも最初に「自ら登録する」という意志・行動が必要になり、かつてのお見合いや職場結婚のような(半)強制力を伴わないという点では、皆婚社会への回帰を促すほどの力を持つ可能性はそれほど大きくないように思う。