試される「中銀の独立性」
このように、パウエル体制からの転換を目指すウォーシュ氏の政策方針は、現実の壁に直面せざるを得ない。足もとでは中東情勢の緊迫化による原油価格の高止まりもあり、インフレ再燃への警戒から金融市場では利上げ観測すら出ている。合議制で金融政策を決めるFRBである以上、状況次第では利上げに追い込まれる可能性も否定できない。
2025年7月24日、ワシントンD.C.の連邦準備制度理事会(FRB)を視察中、ジェローム・パウエルFRB議長と話すドナルド・トランプ大統領(写真=The White House/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)
ここで最大の焦点となるのが、「トランプ大統領との関係」だ。仮に利上げとなれば、利下げを求めてきたトランプ氏からの猛烈な批判が再開し、現在の蜜月関係は一気に暗転するだろう。
一方で、政権の意向に沿って無理に「利下げ」に動いたとしても、インフレ懸念から住宅ローンや企業業績に直結する「長期金利」が上昇してしまえば、トランプ氏はやはりFRBに対して責任を押し付けてくるはずだ。
当初から困難な状況に直面するウォーシュ氏だが、彼にはウォール街との強固なコネクションと、2008年の世界金融危機の際にFRB理事として実務経験という強みがある。金融市場の動揺に対して柔軟に対応する方策を示すことで、トランプ氏からの圧力を和らげ、FRB内でのリーダーシップを確立していく可能性はある。
「政治的な風見鶏」こそカギになる
また、ウォーシュ氏の最大の特徴として、政治的な立ち回りのうまさが挙げられる。過去には政権の顔色に合わせて主張を変える「政治的な風見鶏」と揶揄されたこともあるが、その柔軟性こそがカギになる。
トランプ政権下でFRB議長としてどのようなレガシーを残すかは、最終的に「FRBの独立性をどれだけ維持できるか」にかかっている。ベッセント財務長官ら政権中枢と巧みに連携し、変則的な形であれ中央銀行の独立性を死守できれば、それは彼にとって大きな功績となるだろう。

