日本語でも英語でもなつく
市川さんも言う。
「商品化までにはピンチがありつつも、細く長く研究開発を続けてこられたのは、挑戦に寛容な会社だったから。普段、プリンターなどの機械を作っている技術者の方々が、一生懸命モフリンと向き合う姿にはキュンとしました(笑)。企画部からの要望に対して『やってみるか』とトライしてもらえた。それがモフリンのヒットした要因になったと感じます」
機能を足すのではなく、削ることによって生まれたモフリン。この設計判断は、当初想定していなかった効果も生んだ。
モフリンは言葉を話さず、言語も認識しない。日本語で話しかけても、英語で話しかけても、モフリンには関係ない。声の特徴量だけを覚え、その人になつく。結果として、この商品は言語の壁を持たない。米国、英国での販売もすでに始まっており、グローバル展開は自然な拡張として進んでいる。
余計なものを省くことで、人の心が入り込む余白を生む。創業時から流れる開発者マインドが、一見非効率に見える8年もの開発期間を支え、異色のヒット作を世に送り出した。この挑戦の成功は、引き算という思想が成熟企業の生き残り策になりえることを静かに示している。

