400万通り以上の個性

感情AIによってモフリンはオーナーの接し方によって、鳴き声や動きが変わり、様々な喜怒哀楽の表現ができる仕様に。また、声の周波数を分析してオーナーを識別し、モフリンが特別な仕草をした際のオーナーの反応を記憶するという「なつき機能」を実装。飼い主好みの仕草に変化していくよう設計した。

「例えば、平日はパートナーがよく声をかけているのでパートナーに懐きますが、週末に本人さんが一生懸命声をかけると、土日にはその人の方に愛想のいい子に、というように学習します」(市川さん)

あえて“生き物らしい”個体差を出そうと元々の個体が持つ動きの癖と、ユーザーの接し方によって変わる性格を組み合わせ、最終的に400万通り以上の個性が生まれる設計となった。

撮影=プレジデントオンライン編集部
撫でるとモフモフの毛皮の中に「骨」を感じ、小動物観を強く感じる。

ようやく完成したモフリンだったが、ここで次なる壁が立ちはだかる。「おもちゃと何が違うのか」──。機能性を重視した同社のこれまでの商品とは異なり、感性に訴えかけるという新領域に挑んでいるだけに、経営層から商品化の決定が降りなかったのだ。

「世間が驚くことをやろう」

そこで、市場価値を示すため、2020年ベンチャー企業と組みクラウドファンディングを実施。目標金額の約30倍の資金を集めることに成功した。2021年には世界最大の先端技術の見本市「CES」でベストイノベーションアワードを受賞した。こうした社外からの評価を追い風にして、ついに2024年11月の発売へとこぎつけた。

開発が始まってから販売開始まで8年近く。メンバーは入れ替わり続け、開発担当で初期から携わっているのは二村さん一人だけだ。販売できるかどうかもわからない、同社としては異色の商品の開発は、孤独ではなかったのか。二村さんはこう振り返る。

「特に我々のような年長世代には異色の商品開発に見えたと思います。同僚から『なぜそんなことやっているの?』と言われることもありましたが、『これいいよね』と認めてくれる人もいた。私が入社したころから『世間が驚くことをやろう』という空気感はカシオの中にありました」