※本稿は、クィン・スロボディアン、ベン・ターノフ、訳・樋口武志『マスキズム 新たな独占の時代』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
極右アカウントが次々と復活
訪問者数においては最大級ではなかったにもかかわらず、常にTwitterは世論へのとてつもなく大きな影響力を持っていた。ジャーナリストは時代の動向を掴む手段として頼り、このプラットフォーム上でトレンドとなったトピックだけをもとにして記事を書くことも多かった。政治家はオンラインでのブランドを築くために利用した。
トランプは2021年にTwitterから追放されていたにもかかわらず亡霊のように存在感を示し続けており、このプラットフォームがどれほど強力なメガホンになり得るかを教えてくれる。
当然ながら、マスクによる買収は右派から広く称賛された。「意味があると感じる物事はほとんどないが、これには意味があると思う」とは極右インフルエンサーのカーティス・ヤーヴィンの弁だ※1。
※1:Curtis Yarvin, “The Twitter coup”, Gray Mirror (April 15, 2022).
買収したマスクはまず、Qアノンの信奉者、白人ナショナリスト、ネオナチなど、不適切な投稿だとして削除されていた何百もの極右アカウントを復旧させることから始めた※2。しかしこのサイト改革は、旧来のメディアのように、会社がコンテンツに対して編集権を行使すれば達成されるようなものではなかった。
※2:Brandy Zadrozny, “Elon Musk’s ‘amnesty’ pledge brings back QAnon, far-right Twitter accounts”, NBC News (December 2, 2022).
ソーシャルメディアはFoxニュースのような一方通行の放送メディアではない。つまり編集方針を書き換えさえすれば大衆が従うわけではない。そのため、技術面でのより創造的な工夫が必要だった。
本物を証明する「青いマーク」は課金制に
マスクがおこなった最も重要な変更は、同プラットフォームの認証システムに関するものだった。もともとTwitterはユーザーの表示名の横に青いチェックマークを付け、偽物でないことの証明としていた。
このマークは著名な公人や組織のために使われてきたものだったが、マスクはそうしたアカウントからチェックマークを取り上げ、月額料金を支払う意思のある者には誰であっても認証を与えるようにした。
実際には、そうやって月額料金を支払う人の多くはマスク支持者だった。そして認証済みアカウントからのツイートはプラットフォーム上で優先されたため――彼らの投稿の表示はアルゴリズムによってブーストされ、相手への返信はどんなスレッドでも一番上に表示された――この動きは、親マスク派の声を増幅させる効果を持っていた。
マスクは伝統的な編集長の役割を引き受けるのではなく、このプラットフォームを自分の世界観を増幅する場所に作り変えたのである。そうすることで、彼は社会学者のパオロ・ジェルバウドが呼ぶ「デジタル政党」と同じようなアプローチをしていたと言える※3。
※3:Paolo Gerbaudo, The Digital Party: Political Organisation and Online Democracy (London: Pluto Press, 2019).

