「デジタル政党」は独裁化しやすい
2000年代と2010年代の選挙では、候補者や政策の選択に関する有権者の声を、デジタルツールの活用によって直接届けていくことを約束する新しい政党がいくつか現れた。ドイツ海賊党からイタリアの五つ星運動に至るまで、そうした新しい政党は、インターネットが持つ参加型という特徴が、新しい種類の参加型政治をもたらすというビジョンを掲げていた。
しかしジェルバウドの説明によれば、そうした政党は実際には独裁制になり、「巨大な支持基盤」が、その代弁者である「ハイパーリーダー」に従う構造になっていた。代議制民主主義のように制度化された枠組みが存在しないため、ひとりの人物に桁外れの権力が集まったのである。
インターネットの進化を受けながら、分散化は結局のところ独占に行き着いたのだった。マスクの「X」は、この一見矛盾するような進化を利用した。彼の作った街の広場は誰にでも開かれているが、その広場の中心に置かれた演説台に立つたったひとりの人物、つまりマスク自身に権力を与えるような作りになっていた。
プラットフォームを私物化するマスク
マスクはエンジニアたちに指示して自分の投稿が多くの人間に届くようにしたため、彼がひっきりなしにおこなう投稿やリポストを通して、彼をフォローしていないユーザーを含めて何百万人ものフィードにマスクの視点が着実に送られていくことになった※4。マスクがハイパーリーダーだとすれば、スーパーベースは3段階のプランを持つ「Xプレミアム」の有料メンバーたちであった。
※4:Zoë Schiffer and Casey Newton, “Yes, Elon Musk created a special system for showing you all his tweets first”, The Verge (February 15, 2023).
上位プランになるほど、使用の自由度が高く、より長文の投稿が可能で、しかも誰かへの「リプライの優先表示」も強化された※5。これは公共圏をサブスクリプション化し、会員ランクに応じて序列化したものだと言える。
※5:“About X Premium”.
このデジタル政党はグローバルなものでもあった。2023年から2025年にかけて、マスクはアルゼンチンからイタリア、ニュージーランドに至るまで、少なくとも16カ国の右派政治運動や政府を後押しした※6。
※6:David Ingram and Bruna Horvath, “How Elon Musk is boosting far-right politics across the globe”, NBC News (February 16, 2025).
マスクは、非白人の移民を白人文明にとっての致命的脅威と見なすヨーロッパの民族的愛国主義者たちの考えを拡散することを特別に好むようになった。

