「安定的な皇位継承」の確保策は先送り

そのような高市内閣の下で、立法府の議論の取りまとめを急ぎ、いよいよ皇室典範の改正に向かおうとしている。

しかし森議長らは結局、国民の声から背を向けて、「立法府の総意」ともほど遠い、無理で無茶なプランを、数の力で乱暴に押し込もうとしている。いったい何のために、全政党・会派に呼びかけた全体会議が設けられたのか、その存在意義自体が問われる。

政府・与党などが狙う、皇室典範改正のポイントをわかりやすくまとめると、以下の通りだ。

① 次の世代の皇位継承資格者がわずかお一方、悠仁親王殿下だけしかおられない、という“皇室の危機”に対処する「安定的な皇位継承」の確保策は、手つかずのまま先送りする。

敬宮としのみや(愛子内親王)殿下をはじめ未婚の女性皇族方が結婚された場合は(ご本人が同意されたら)、そのまま皇族の身分にとどまっていただく。だが、その配偶者やお子さまは同じ家族でも、身分が異なる「国民」とする。近代以来、前代未聞の「異例の家族」を強制することになる。

③ これまで80年近く民間で暮らしてきた、いわゆる旧宮家系子孫の“親の代から”すでに国民の男性を、同じ国民なのに家柄・血筋=門地もんちによって“別扱い”して、ほかの国民には禁じられている皇族との養子縁組を例外的に認め、婚姻を介することなく特権的に新しく皇籍の取得を可能にする。これは憲法(第14条)が禁止する「門地による差別」にあたる疑いが指摘されている。しかし、お構いなしにその人物が結婚し男子が生まれると、その子には皇位継承資格も認める。

もし②③をそのまま制度化すると、どうなるか。

民間系の血筋が皇室を受け継ぐことになる

②によって、未婚の女性皇族方がめでたくご結婚され、お子さまに恵まれても、お子さまは国民なので、今後さらに制度改正がなされない限り、必然的に1代限りとなる。それは端的に言えば、天皇陛下の血筋が皇室から途絶えることを意味する。

それとは逆に、③は名分上「皇統に属さない」(美濃部達吉『憲法撮要』ほか)にもかかわらず、男子には皇位継承資格を認める。なので、結婚→男子出産が続けば、そちらの系統は皇室にとどまり続けることになる。

つまり今後、高市内閣が推し進めようとしている皇室制度の変更が政府の思惑どおりに展開すれば、これからの皇室は、天皇陛下のご系統ではなく、民間人の賀陽家とか久邇家、東久邇家、竹田家などの血筋の人物が、受け継ぐことになる。

最悪のケースとして、もし悠仁殿下が(男子出産への重圧などが障害になって)ご結婚されなかったり、ご結婚されても男子に恵まれなかったりしたら、皇室がすっかり民間系の血筋に置き換わる可能性すら、否定できない。