会見に表れていた愛子さまへの思い
天皇陛下は敬宮殿下のご養育方針について、殿下がまだ3歳だった当時に「どのような立場に将来なるにせよ……」と述べておられた(平成17年[2005年])。その頃、ちょうど女性天皇・女系天皇を認める皇室典範の改正に向けて事態が動き出したタイミングだった事実を考慮すると、敬宮殿下が皇位を継承される未来をも想定して、養育にあたられていたと拝察できる。
これは、その後のご教育においても貫かれていた。たとえば、今年の天皇誕生日に際しての記者会見でも、次のようにおっしゃっていた。
「愛子には、引き続き感謝と思いやりの気持ちを持ちながら、これからも多くの経験を重ねて更に成長し、皇室の一員としての務めを大切に果たしていってくれることを願っています」
「戦争の記憶と平和の尊さを次の世代へ引き継いでいく役割を愛子にも担ってほしいと思っています」
「私達はやはり愛子にも1人の人間として、そしてまた1人の皇族として立派に育ってほしいというふうに思って、今まで育ててきたつもりです。そういうことの延長線として、今後ともいろいろな面で力を出してほしいし、国際親善の面でも活躍してほしいという願いを強く持っている次第です」
このようなご発言からは、皇室の大切な精神や役割を、次代を担う敬宮殿下に託そうとするお気持ちが、伝わる。
天皇皇后両陛下ならびに敬宮殿下がご一家おそろいでご公務に臨まれる「令和流」のあり方は、そのようなお気持ちを想定しなければ理解しにくい。さらに令和流のご公務によって、そのようなご自身のお気持ちを、国民の目に見える形でお示しになっている。
精神の継承こそが「皇室の伝統」
上皇陛下は、先に紹介した平成の「皇室典範に関する有識者会議」報告書が女性天皇・女系天皇を可能にする皇室典範の改正を提言したことについて、宮内庁担当の記者が「皇室の伝統の大転換になります」とネガティブに述べたのに対して、はっきりと否定されていた(平成17年[2005年])。
「天皇及び皇族は、国民と苦楽を共にすることに努め、国民の幸せを願いつつ務めを果たしていくことが……皇室の伝統ではないかと考えている」と。
すなわち、一夫一婦制で少子化という条件下では持続困難な男系継承などではなく、「国民と苦楽を共にする」精神の継承こそが真の「皇室の伝統」である、とのお考えだ。
しかし残念ながら、この時の皇室典範改正の動きは、悠仁殿下のご誕生を口実にして、止まってしまった。
この時の政府の無責任な対応について、「(悠仁殿下のご誕生によって)不安定な皇位継承制度の構造的問題が解決したわけではなかった。悠仁親王誕生を喜びながらも明仁天皇(上皇陛下)は不安を抱いていた」という(井上亮氏『宮内庁長官』令和7年[2025年])。

